1ぴきめ(2002年5月)

まねき猫がであった 今月のおもろい人

              梁容子さん




 二〇代の終わりからずっと大工仕事をやっててね。五、六年前に広島で木工ろくろの先生に習ってん。そのときはわからなかったけど、何か自分なりのものをつくりたいという意識があったのね。それで木のくずを拾ってきてお椀やなんかをつくりだしたのが、私が先生から離れてつくったはじめての作品。
 木という生命体がきちっと見えるようになったのは、リューマチがきつくなって大阪へ帰ってきてからやね。木は成長する過程での傷痕とか、いろんなものを持ってるでしょ。それでも黙って立ちつくしてるじゃない。そういう部分を含めて表現するものをつくりたかったのね。

 今回新しくつくった「枝物語り」もそこから発展してきた。枝分かれというのは、人間でいえば関節。そこを削っていったらすごくおもしろい模様なのよ。木の枝は太陽の方向によく伸びていくけど、よく見たら反対を向いて伸びてるやつもおるんよ。私は木を見ても何を見ても、そういうマージナルな部分に目が向くのかもしれないね。

 木をろくろにかけて刃物を入れると、反発するときがある。そういうときは強引に支配するんじゃなくて、おたがいに折れあうことが大事。木にもなりたい形があって、それを木とよく相談してつくるわけ。木には言葉はないけれども、私は木の主張がわかるねん。
 まっすぐに育った素直な木は簡単に削れるけど、私にとってはいっこもおもしろくない。こぶの堅いところや穴があいているところは、すっごい私の気持ちが引き出される。人間もいっしょで、そういう人と身近につきあうのはイヤやけど、いろんな影響を受けるでしょ(笑)。
 生命というものはどんな環境でも生きようとするから、多様化することが大切なんやね。だから人間もいろんな人がいてあたりまえ。そういうことを言葉じゃなく、木を使って表現できたら最高!
 
 これから沖縄に引っ越して漆を勉強します。そして「作品」として帰ってくるわね。作品は私そのもの、私の分身やから。


梁容子●やん・よんじゃ
R&R・木の創作工房主宰。不思議な木のうつわ作家。


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