8ひきめ(2002年12月)

まねき猫がであった 今月のおもろい人

兵頭千夏さん



 これまで(おも)にビルマを撮影(さつえい)してきた写真家(しゃしんか)兵頭(ひょうどう)さんは、今年(ことし)(がつ)、チベットの聖地(せいち)カイラスをめぐる巡礼(じゅんれい)(たび)をしました。(文責(ぶんせき):編集部(へんしゅうぶ) 

 チベットでは、今年(ことし)12(ねん)に1()巡礼年(じゅんれいどし)なんですよ。チベット(じん)にとっては(いの)ることが人生(じんせい)そのものなのね。カイラスという(やま)自体(じたい)釈迦牟尼(しゃかむに)(おも)われてて、一生(いっしょう)一度(いちど)、その(やま)周囲(しゅうい)52q(キロメートル)(まわ)って(かえ)ってくる。それだけの人生(じんせい)(しあわ)せだと(おも)ってる(ひと)たちだから、やっぱり(つよ)い。()きてる姿(すがた)()てると。

 チベット(じん)(なに)()べて巡礼(じゅんれい)してるかっていうと、バター(ちゃ)とツァンパっていう大麦(おおむぎ)(こな)()ぜて団子状(だんごじょう)にしたもの。ときどきヤク(チベット高原(こうげん)特有(とくゆう)()(なが)(うし))の()(にく)。ほんまにそれだけしか()べへん。すごいストイックな(かん)じ。風呂(ふろ)(はい)らないのでコテコテになってるけどみんな(しあわ)せそう。

 チベットの(ひと)(かお)にパワーがあるわ。(かお)()ってるだけで()になるんだけど、そこで自分(じぶん)(なに)(つた)えるかというテーマを()()げたときに、()かれたのが(いの)姿(すがた)だった。チベット(じん)五体(ごたい)投地(とうち)っていう(いの)(かた)()て、「(わたし)はこんな真剣(しんけん)(いの)ったことってないなあ」って(おも)って。(かれ)らは日々(ひび)(いの)ってるから、あれだけ中国(ちゅうごく)侵略(しんりゃく)されてても、きっと(なに)もかもは(おか)されてしまわない(つよ)さがあると(おも)う。

 (わたし)はビルマで仏教(ぶっきょう)出逢(であ)ったけど、()どものときから「なんで(ひと)()ぬの? どこから()まれてきたの?」って(かんが)えてた。16(さい)という多感(たかん)時期(じき)(はは)()くなったから、よけいにね。母親(ははおや)がすべてで、いちばんの理解者(りかいしゃ)やったから、突然(とつぜん)グル(導師(どうし))を(うしな)ったような(かん)じで、必死(ひっし)でグルを(さが)してた。(かみ)であってもよかったし、彼氏(かれし)であってもよかった。でもね、大学(だいがく)卒業(そつぎょう)してから()ったオーストラリアの(たび)で、結局(けっきょく)それって自分(じぶん)(なか)にあるんだっていうことがわかった。(かみ)自分(じぶん)(なか)にあるって。そんな()(かた)したらみんな()くねんけど((わらい))。

 (たび)って自分(じぶん)との対話(たいわ)やと(おも)うねん。でも(いま)日本(にほん)では、時間(じかん)()われてなかなかそういうことができへんやん。ほんとに(いま)のお(かね)(もの)中心(ちゅうしん)とした価値観(かちかん)間違(まちが)ってると(おも)う。でもそのことにちょっとずつ()づきはじめてる(ひと)がいる。(とく)(わか)()(あいだ)で。

 (わたし)(むかし)日本(にほん)順応(じゅんのう)できなくて(くる)しんでたけど、(いま)はだいぶ(らく)になった。どっかで「兵頭(ひょうどう)さんはお(かね)がなくてかわいそうな()」と(おも)われてても平気(へいき)(あい)とか真心(まごころ)とか、そういう()()えないことのほうが大切(たいせつ)ってことをビルマで(まな)んだから。

 

ひょうどう・ちなつ●1969(ねん)(おお)(さか)()()まれ。新聞(しんぶん)雑誌他(ざっしほか)にフォト・ルポルタージュを発表(はっぴょう)。ビルマに()らす人々の生活(せいかつ)伝統(でんとう)習慣(しゅうかん)仏教(ぶっきょう)女性(じょせい)をメインテーマに()(つづ)ける。近年(きんねん)仏教(ぶっきょう)の「(いの)り」をキーワードに撮影(さつえい)来年(らいねん)四国(しこく)(ある)遍路(へんろ)計画中(けいかくちゅう)NHK(エヌエイチケー)大阪(おおさか)のウェブサイトに森本(もりもと)(あや)という仮名(かめい)(もち)いてビルマの写真(しゃしん)文章(ぶんしょう)掲載(けいさい)。http://www.nhk.or.jp/dig/essay/morimoto/index.html

 

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