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点数制じゃ計れない介護/鈴木勉

はじめに

先日のこと、旧知の介護者から「障がい者OKの出張ホストってない?」という電話がかかってきた。「なんでそういう相談はいつも俺やねん?」。前にも「車いすで行ける風俗店知らんか?」とか「裏ビデオ手に入らんか?」とか。「俺は知らんっちゅうねん」と言いながら、ついついご要望にお応えしようとしてしまうから、よけいにアカンのかぁ? おかげで嫁はんに内緒で、大阪の十三にある車いすでも入れる某風俗店に、介護者同伴で実態調査に出かけていったこともある。いや、別に行きたかった訳じゃ…、ニシシ…。

介護者との損得抜きのつき合い

そういう相談は、たいてい昔からの介護者たち。損得抜きで障がい者とつき合ってきた人たちだ。パート感覚のヘルパーからは、決してそんな相談は来ない。派遣された時間帯だけ、食事、トイレ、掃除、買い物など、決められたメニューをこなしていくだけ。「支援費」以降、そういう介護者をよしとする事業所が増えた。

この間、自立支援法の聞き取り調査で、調査員が話の合間に言った「電動車いすで電車には乗れないですよね」との発言にはびっくりしてしまった。オイオイ…。活動的な障がい者のことをほとんど知らないのだ。折りたたみのスロープ使って電車に乗り降りしている所を見たことないんかなぁ?

以前、ヘルパー派遣事業所に電動車いすで行ったら、「それ、どうやって動くんですか?」と所長に聞かれたこともあった。介護保険で高齢者介護を中心にやってきた事業所やヘルパーの、障がい者に対する知識なんてそんなもんである。介護保険と障がい者の介護保障を統合しようなんて言い出した役人たちの知識もきっとそんなもんやろう。そんな人達に僕達の介護保障を任せられるのか? 

これから介護保険に統合されれば、何をするにも点数制。メニューにないサービスは受けつけない事業所の方が多くなるだろう。北欧では、障がい者の性的な介護も政府が保障している国もいくつかある。日本なら「税金使って介護者をつけて風俗に行くのか」といった批判的な見方も多いだろう。けど、どこが悪いねん?

障がい者が人生を楽しむために

人間がごく普通に暮らす中で必要なことというのは、喰って排泄して風呂入って寝ること、それだけではない。昔からの介護者が僕にシモネタの相談に来るのも、障がい者が人生を楽しむためにしたいことをできるように、本当に親身になって考えているからなのだ。障がい者の介護保障の基本はそこにあってほしいと思う。これから始まる自立支援法は障がい者をただ生かしておくだけの、いや死んでも別にええでという制度になってしまった。それを救うには、また二〇年前のボランティアに頼る時代に戻るしかないのかなぁ…。

十三の風俗店に実態調査に行ったとき、介護者と共に個室から出てきた若い障がい者を見かけた。スッキリした顔で、介護者に「ハァ気持ちよかった」と言っていた。ええなぁ…ひとりモンは。一〇年ごしの付き合いの俺の介護者が「個室行くんやったらチケット買ってくるで」と言うてるのに「やめとくわ」と言っておとなしくストリップを鑑賞していただけの気弱な俺。嫁はんに内緒って言うても、この文章を口述筆記してるの嫁はんやしぃ。トホホホ。

(2006/09/29)



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