「障老」介護でおおわらわ/鈴木勉
うちには八五歳になるばあちゃんがいる。ヨメハンの母親で、二年前に連れ合いを交通事故で亡くした際に、横浜から尼崎に引っ越してきた。当初はそれなりに元気だったので、同じマンションの一つ上の階に一人で住んでいる。最近は認知症の症状がだいぶ進んで、そろそろ一人にしておくわけにもいかなくなってきた。ヘルパーやデイサービスを利用しているが、それだけでは間に合わない。結局ヨメハンが一人でバタバタするハメになっている。やはり現在の福祉制度では完璧な介護保障は出来ない。悩みながらもグループホームや特養老人ホームを何度か見学に行っている。
尼崎市内の特養の待機者数は各施設とも一五〇〜六〇〇人余り。一人が重複して申し込んでいるとはいえ、気が遠くなるような人数だ。僕は障がい者に関わる状況や制度に関しては結構詳しいつもりやけど、老人福祉、介護保険の方はほとんどわからない。ヨメハンにつきあわされて、いろいろ勉強する羽目になった。なにごとも経験やなぁ。
気がつけば親の面倒を見る歳に
気がついてみれば、障がい者運動を一緒にやってきた僕の周りの仲間たちもみんな五〇歳前後になり、親は七〇〜八〇歳代になっている。面倒をみてもらってきた親の面倒をみる歳になってきているのだ。
障がい児を抱える親たちは「この子を置いて死ねない」とよく言うけれど、歳をとってくると逆に障がい者の子どもの方が「この親を置いて死ねない」という状況も少なくない。老老介護もあれば「障老」介護もあるのだ。兄弟がいる場合には、高齢の親の介護と障がい者の兄弟の介護と両方で、大変な思いをしている人も多い。僕には妹がいるのだが、 自分達のことは自分達で何とかして、妹夫婦には世話をかけないようにと思っている。自分の親もまだバリバリ現役だし、妹夫婦に任せているから安心していたけれど、ヨメハンの親をみることになるとは予想外。甘かった……。
親も子も安心して暮らせるように
自立支援法も障がい者が親の面倒をみるなんてことは全く想定していない。いずれ介護保険に統合されるのであれば、老人は老人福祉、障がい者は障がい者福祉と縦割りの制度ではアカンやろう。「何もかも一緒くたにする」のがいいとは決して言わないが、誰もが必要な介護や援助を受けながら、親も子も互いに面倒を見ながら、安心して一緒に暮らしていけるような施設や、地域で暮らしていけるような制度が必要になってきているのではないか。
自立支援法が施行されて以来、障がい者の親が将来を悲観して心中を図るケースが増えているという。そんな悲惨なことがなくなるような制度に変えて、やはり、国自体が障がい者やお年寄りの介護保障の責任を再認識し、キッチリとしていかなければならないと思う。 とはいえ、障がい者の施設から飛び出してきた僕にとっては、トシとってまた施設に逆戻りする?なんかムカつく。クソォ、俺はこれからも人に迷惑をかけまくって地域で生き続けてやるぅ! ヨメハン、俺が死ぬまでよろしくぅ。(しらんがなぁ……by ヨメ)
(2007/02/20)