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元日号に観る各社の意気込み/石塚直人

際立っていた読売「時効取得」

元日の新聞紙面は、各社が選りすぐりの特ダネをぶつけ合うものと決まっている。取材相手もふだんと違ってなかなかつかまらないから、他社が追いかけるとしても時間がかかり、「抜いた」側の快感はひとしおだ。

今年の全国紙では、読売の「時効取得」が際立っていた。四年足らずの間に、東京ドーム八個分三七万平方メートル(二〇〇億円相当)の国有地が時効により占有者に無償で譲渡されていた、との内容で、財務省はこれまで一切、実態を明らかにしていなかった。

私もそんな仕組みがあることさえ、知らなかった。財政赤字を理由に福祉や教育が切り捨てられる一方で、事情を知る一部の開発業者だけが転売で儲けている現状は、確かにおかしい。記事は大阪社会部の取材で、大阪本社紙面では一面トップと社会面見開きで掲載、東京紙面もこれに近い扱いとなった。

多面的取材できる連載記事

ただ、一本でそれほど大きく扱えるニュースがいつもあるわけではない。朝日と毎日は大型連載の第一回を一面の大半を使って展開した。近年、こうした例が増えている。

朝日のテーマは「ロストジェネレーション」、毎日は「ネット君臨」。それぞれバブル崩壊後に成人した二五歳から三五歳の世代、社会を大きく変えたインターネットとその周辺をじっくり取材しようとの狙いだ。日経の「ニッポンの家計・エコノミー」も含め、興味深く読んだ。

連載のメリットは、多面的な取材ができることである。多くの関係者に会い、話を聞く。テーマの大枠は設定していても、取材を重ねるうちにそれが深められ、中身が変わってしまうことも少なくない。読者を引きつけるためには、各回に印象的な挿話が最低二つは必要で、とくに第一回をどう書き始めるか、には神経をすり減らす。

元日号任される緊張と名誉

元日から始まる一面連載となれば、二、三ヵ月はチームを組んで準備する。一面は新聞の顔であり、チームも各部の混成部隊が多い。一方で社会面や経済面のそれは、社会部や経済部の力量を示すものとされる。 全国紙の社会面連載は発行本社で異なるのが普通だ。東京社会部よりも人数の少ない、大阪や西部(九州)の社会部の腕の見せ所である。

私も支局時代、地方面で多くの連載を書いた。

元日の第一回を初めて任されたときの精神的な昂りは今でも思い出せる。

正月連載は全員の競作となるのだが、元日は他にニュースが少ないこともあり、これだけで紙面の大半を埋める。二回目以降とは労力も名誉(?)も大違いだ。「もう新人ではなく、支局の柱として認められた」と誇らしい気分だった。

(2007/02/20)



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