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手話で話せる病院〜森本菜穂子

往復三時間の通院に同行して

二年前の四月から月一回、心の病を持つ友達のろうあ女性と一緒に琵琶湖病院へ同行していた。電車で行くと片道一時間四〇分位かかる所にある。その上、琵琶湖病院は琵琶湖を見下ろす山の中にあるので、坂を上って行かなければない。坂を上る度に友達は「しんどい、疲れた」と言うが、頑張って一緒に上って行く。

そんなにまで遠い所に行く必要があるのかと思われるかもしれないが、理由は琵琶湖病院の中に、聴覚障がい者用外来があり、全国から心の病を持つろうあ者の患者が診察や治療を受けに来ている。また医師も中途失聴者で、手話でろうあ者の患者とコミュニケーションができる。また受付や薬局の人や看護師もできる限り手話で応対しているので、ろうあ者の患者は安心して治療を受けられる。だから全国からわざわざ琵琶湖病院まで通うのだ。

通院するようになって、他のろうあ者の患者と知り合い、友達になった。同じ心の病を持つろうあ者の仲間がいることは、治療を受けている彼女にとって、心の支えになるだろう。

友達がグループカウンセリングを受けている間、私はロビーで待っていた。回りを見ると、私と同じように他のろうあ者の患者の母親も待っていた。その母親に聞いてみると、手話を習っているようで、自然に手話で会話した。母親やろうあ者の患者も三重県から電車で片道三時間かかって通院している。「大変だけれども、同じ心の病を持つろうあ者が他にもいるので、心の励みになり通院している」という母親の話を聞いて、片道一時間四〇分の疲れが吹っ飛んだような気がした。

安心して治療を受けられる環境を

今は都合により別の病院に通院しているが、その病院も月曜日から金曜日まで朝九時三〇分から四時まで、手話通訳者が待機している。心の病気をもつろうあ者が来院した時、気兼ねなく手話通訳を頼めるので安心して治療を受けられる。しかし、手話のできる医師や看護師はいまだ少ない。去年から始まった自立支援法により、コミュニケーション支援で市町村によって手話通訳料が有料になる所が出て来ている現在、安心して治療を受ける為の手話通訳が有料化になることで、ろうあ者の負担になり、かえって病院に行かない人が増えて来るのでは困る。手話通訳が必要なのはろうあ者だけではない。病院の医者、看護師などの医療関係者は手話ができないからその人たちに手話通訳が必要である。だから手話通訳料を払ってもらうのは当然ではないかと思う。もし手話通訳料を払うのが惜しいなら、病院の医療関係者が手話を覚えてもらうしか方法がない。手話を覚えてもらった方が、ろうあ者は喜んで病院に行くと思う。それを国や国会に訴えていきたい。

(2007/05/01)



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