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リレーエッセイ:一億円のお買い物〜佐野武和

はじめに

広い土地と古い建物を手に入れた。たまたま障がい者メンバーの就労先として業務受託関係にある印刷工場の隣だ。二年前に倒産した建設会社の跡地で、同級生である銀行員に声をかけたところからトントン拍子に話が進み、破産管財人を京都に訪ね、裁判所に買い受けの申込をおこなった。

そしてドーンと一億円の現金をトランクに詰め会場に向かうところでいつも夢から覚めた。びっしょりの汗だ。

印刷工場での業務受託メンバーの思いに涙

しかし六月の一五日、夢が現実となった。当日、トランクはなかったが、銀行の応接室でいくつかのはんこを押し、即日登記のために依頼した司法書士さんに九〇万円の高額印紙をわたした。あっけない「一億円のお買い物」であった。

印刷工場には七人の障がい者メンバーと二人のジョブサポーターが毎日出向いている。昨年の秋から、おもに印刷物の箱詰め、袋詰めの作業を受託している。平日休みもあれば土曜出勤もある、すさまじい職場だ。派遣のシルバー人材のおばちゃんたちの隣でひたすら作業をこなす我がチームは、業務受託が故に、時間が掛かっても出荷数量に合わせて残業まで発生する。

先日も夜九時まで残業。思わず迎えに向かったおいらは「こんなに遅くまでやるなんて世間が知ったらなんて言われるかわからんぞ」と胸の中が煮えくりかえっていた。しかし駐車場に着いた私に向けられたのは、メンバーやスタッフの口からの「遅くなってすいませんでした」の言葉だった。いっしょうけんめい働く彼らを評価せず、周囲や世間の目を気にするおいらはリーダー失格だ。運転しながら涙があふれ、鼻をすすった。

就労試験の拡大進めるのだが…?

一億円の物件で、この印刷会社とのコラボレーションの話が進んでいる。印刷会社が印刷物の出荷前加工機械を提供し、障がい者の仕事を確保する。私たちには、出荷前作業と部材の保管管理を、徹底した品質管理の元におこなうということが求められる。

何しろ、隣地に一〇〇〇坪の土地をもつ物件。可能性は好条件を生んだ。当面は湖北という障がい者の就労資源が乏しい田舎にあって、「就労継続支援A型」の資源拡大を一気に推し進めるつもりだ。

あれぇ〜おいら、「自立支援法」に反対していたはずやのに。トホホ・・・。

(2007/08/01)



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