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激震政界を報じるマスメディア〜石塚直人

「政界一寸先は闇」とは、よく言ったものだ。民主党の小沢代表が福田首相との 党首会談でいったん合意した「大連立」。会談を終えた一一月二日夜から連休を挟んで政界は大揺れとなり、余震は一週間が過ぎてもまだ続いている。

小沢氏はこれを党に持ち帰り、役員会で拒否されたあげく辞任を表明。今度は党幹部らが必死で慰留し、七日に続投が決まった。とはいえ、元のさやに収まったのだからこれでシャンシャン、とはいかない。民主党に政権交代への夢を託した人たちは口々に失望を語り、野党共闘にも暗雲が漂う。第一、守屋前防衛次官らの疑惑追及など、自民党政治の闇をあぶり出すニュースはこの間、吹っ飛んでしまった。

テレビや週刊誌も含む報道によれば、老練なはずの小沢氏がこれほどの失態を犯したきっかけは、読売グループ本社会長の渡辺恒雄氏だという。持論の「大連立」で小沢氏を説得し、森・元首相らも動かして党首会談に持ち込んだらしい。

しかも読売新聞は、四日の朝刊で「大連立は小沢氏が持ちかけた」、さらに五日朝刊では「小沢氏が副総理となり、自民一〇、民主六、公明一の閣僚ポスト配分でも合意していた」とまで報じた。政治報道の常で、「関係者によると」としか書かれていないが、多くの人が渡辺氏による情報だと考えても不思議ではない。

問われる民衆からの視点

マスメディアの中枢にいる人間がそうした形で政治にかかわることについて、世論の大半は批判的だ。日本ジャーナリスト会議のウェブ版「視角」(三日)は概略、次のように書く。「記者が主張を持つのは当然で、政治家を相手に論じるのも自由。しかし、その動きと一千万部の巨大紙面が結びつくなら、国民的な思想統制となるわけで、問題と言わざるを得ないだろう」。

今回の読売紙面と渡辺氏との具体的なかかわりについて、私は現在、間違いないと断言できる情報を持っていない。巨大部数なら問題、という立論には、部数が少なければいいのか、の反論も考えられ、不十分さを感じる。歴史的にみて、権力との癒着や不透明な関係が全くないと言い切れる新聞がほとんど存在しないのも事実だ。

同ウェブ版の「リレー時評」は、「『沖縄の怒り』結集のかげに地元紙の力」と題して、集団自決の目撃者を足で掘り起こした沖縄タイムスの取り組みを紹介している。ポイントはやはり、物事を権力者の側から見るか、民衆の側から見るか、ということなのだろう。

民主党は小沢氏の提案を拒否したことで、一定の足場の確かさも示した。今後、他の野党とともに現政権を倒して「国民生活第一の政治」を実現できれば、挫折の教訓が生きたということになるのだが。

(2008/01/05)



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