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一般受験の壁を越えて高校生になりた〜い
「障がい」のある子どもの高校進学を考える学習会 第2回

はじめに

地域の小・中学校で共に学び、共に育ちあってくると、友だちといっしょに高校へ行きたいと思うようになるのは、ごく自然な感情です。

大阪では、三〇年ほど前から高校受験の取り組みが始まりました。はじめは受験することすら拒否されたこともあったのですが、様々な配慮事項を獲得し、今では、三〇〇〇人ほどの「障がい」のある生徒が高校で学んでいます。

〇七年一二月、日の出人権文化センター(大阪市東淀川区)で、第二回北摂「障がい」のある子どもの高校進学を考える学習会=「友だちといっしょに高校へ」が行われました。

前回は、大阪府教委が全国に先駆けて制度化した「自立支援推進校」と「共生推進モデル校」がテーマでしたが、今回は、一般受験です。豊中市内の中学三年生で今春受験に望む川井田健さん親子と、二年前に一般受験で高校生になった折田涼さん親子の受験に向けての取り組みや高校生活について体験談が語られました。

「あたり前に地域で育ってきた娘があたり前に高校に行けるようがんばります!」学習会に参加した中学二年生の保護者からは、こんな感想も寄せられました。

目の不自由な生徒には点字受験が、体の不自由な生徒には代読・代筆が認められているように、点数を取ることが困難な生徒にも問題の差し替えや面接加点などの工夫と配慮があれば、友だちといっしょに高校生活を送ることは可能なのです。(編集部)

同じ空気吸い、影響し合って育つ

点数を取ることが困難な「知的障がい」生徒にとって一般受験の壁は高く厚いのが現実です。今年受験を迎える川井田さんも「中学校側からの進路指導や情報提供がなく、保護者側が集めた情報を先生に説明して進路を考えざるを得ない」という現状への不安が語られました。

それでも川井田健さんは、体験入学で高校が気に入り、入学の希望を強く持っており、友だちが受験体制に入っていることにも影響され、受験に向けて準備をしています。

「同じ空間で同じ空気を吸いながらお互いに影響しあって育って欲しい」―お母さんがそんな思いを強くしたのは、地域で育ちあってきた経験からです。健さんは、五才の時に地域の保育所に入ってから歩けるようになり、言葉も友だちの言葉遣いをまねることで親もびっくりするくらい話すようになったそうです。まわりの友だちの刺激がどんな機能訓練よりも有効なのを実感しているからです。

点数のとれない「障がい」生徒は、自立支援推進校か養護学校か定員割れの高校しか選択肢がない現状の中で、「中学まで作り上げてきた友だちや地域との関係が切れてしまうのか?」そんな不安をお母さんは語りました。本人の可能性を広げ、共に育ちあう選択肢を用意する必要があります。

自立支援コースと一般受験の減少

「地域の学校に行きたい、友だちと同じように高校に行きたいという子どもの思いを親たちの発言から感じました。でも高校の壁は厚い。この思い、怒りをどうしたらいいんだろう。(中二保護者)」こうした感想が、会場から聞かれました。「子どもの権利というものを親がしっかり主張することが大切なんだなとも感じました(中二保護者)。これも共通の思いです。

「自立支援推進校」や「共生推進モデル校」は、先進的な取り組みではありますが、一般受験以上の狭き門で、今後の課題もいっぱいあります。さらに特別支援枠という「自立支援コース」ができたために一般受験が減っているという問題もあります。これについて学習会に参加した中学校教師も「何となく安心してしまった」との反省と共に、あらためて「定員割れを待つのではなく新しい方法を考えていく必要」が語られました。

「人が動けば風が起こる涼が動けば波風が立つ!」
折田涼さん(池田北高校三年生)

全身の筋肉が衰える難病で人工呼吸器を使いながら通学する大阪府立池田北高三年、折田涼さんは、介助者とともに電車とバスを乗り継いで一時間かけて高校に通っています。昨年秋には、北海道への二泊三日の修学旅行にも参加しました。

涼さんは脊髄性筋萎縮症という病気で、生後間もないころから人工呼吸器をつけての生活です。二四時間介助が必要ですが、涼さんと家族の「地域でほかの子どもたちと一緒に学びたい」との強い思いで、地元の小学校に通いました。市教委に働きかけ、介護員の派遣も実現させています。

「地域の保育所に入所した時から高校も地域の高校へという漠然とした思いはあった」という折田さん親子は、中学入学時から「高校受験を視野に入れ、三年間を過ごさせて欲しい」とお願いしていたそうです。

涼さんと同じように二四時間人工呼吸器をつけて暮らす尼崎市の平本歩さんは、二〇〇〇年に 兵庫県立稲園高校をパソコン受験し合格しています。しかし、大阪市立西高校を受験したSさんは、定員内だったにもかかわらず不合格。そんな不安材料もある中、受験を決めました。

「志望校選択は、少しでも可能性のあるところをギリギリまで待って決定し、前期・後期とも受験、後期で不合格の場合は、定時制も含め二次募集があれば受ける。最終的に全て不合格であれば、浪人して再チャレンジ。それでもダメなら受かるまで受け続ける!」。こんな決意で受験に臨みましたが、介助者の代筆、代読による受験で見事合格しました。

「中学校が早くから真剣に動いてくれたことが功を奏し、なかまが本当によく助けてくれた」―折田みどりさんは、合格の喜びをこう語っています。

「人が動けば風が起こる。涼が動けば波風が立つ!」「待っていても世の中は変わらない、向こうが会いたくなくても会いに行く!そうやって社会に問いかけ、変えていく、これが私たちのやり方なのだ」涼さんたちの姿勢と実践が高校一般入試の門をこじ開けてきました。

教育委員会や担任教師に言いたい事は言う

「うちの子どもも絶対に『高校』に入学させたい気持ちを強く持ちました」(中三保護者)。「私はあと二年あるので、その間にどうにか一般受験をさせるつもりで、行動をおこそうと思っています」。こんな感想の一方で、「情報も少なく高校入試については不安がいっぱいです。あきらめず高校入試にむけて努力していきたいと思いました」(中一保護者)。「箕面東高校の取り組みを初めて聞き、高校受験もありかなと考えが変わりつつあります。もう一度高校の先生とお話してみようかと思っています」(中二保護者)という揺れ動く気持ちも寄せられました。

北摂連絡会の呼びかけ人の一人として、入部香代子さんは、「教育委員会や担任の教師に、言いたいことがあればはっきり言う。どの学校を選ぶにしても、お互い(親と子)悔いが残らないように闘うことが大切。闘うことからしか何も始まらない」と言います。

三〇年かかっても教育は遅々と進まないのはなぜなのか? 考えてみてくだい。知らず知らず面倒な事からは逃げているのではなでしょうか?

教育の体系や目的も社会の発展と共に変わっていきます。義務教育を越えて、知的教育を目的とする高校にどう乗り込むかです。

みんなで、一般受験にチャレンジすることで、高校教育の幅を広げ、豊かな発想を活かした教育に変え、そして、障がい生徒の選択肢を増やす道を考えていきたいものです。

障がい者の生活を取り上げたテレビ番組が増えてきました。でも登場する障がい者は、いつも『頑張っている』障がい者ばかりです。それを見て非障がい者は感動し、エールを送ります。でも障がい者は、この期待に応えるために常に頑張り続けなくてはならないのでしょうか。

涼さんは「頑張る」ために高校に通っているのではないようです。彼と同年代のみんなと同じ気持ちで高校に通っているのです。非障がい者なら当たり前にできることを、障がい者には「頑張らせてやらせる」ことが、自立支援ではないはず。少数者の利益を当事者ではなく、多数者こそが考える。それが共同共生の社会づくりではないでしょうか。

第三回は、一般受験での高校進学の取り組みをしている東京と千葉から来ていただき、情報交換・意見交換を行います。

第3回学習会

一般受験での高校進学の取り組みをしている東京と千葉からきて頂き、情報交換・意見交換です。高校進学はまだ先という方も含めて多くの方の参加をお待ちしています。

◆報告
北村小夜さん:東京の取り組み
高村りゅうさん:千葉の取り組み

◆開催要項
日時:2月16日(土)午後2時〜
場所:吹田市民会館 大集会室
(阪急吹田駅・JR吹田駅徒歩8分)
資料代:500円
連絡先:090-9166-5575(鈴木)

(2008/02/10)



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