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ヒメボタル(甲虫目ホタル科)
 体長5〜9ミリ。全体に黒く、前胸部が淡い赤色。成虫の寿命は約1週間、幼虫期から一生をやぶや林などの陸上ですごす。メスは飛べない。 幼虫は陸生で、カタツムリなどを食べる。
 本州から四国、九州地方に分布。吹田でも5〜6ヶ所で生息を確認している。
(写真:塩田敏治氏提供)

吹田の生き物と人2-ヒメボタル
高畠耕一郎

陸生のヒメボタル、西山田の地で乱舞

五月になるとヒメボタル調査隊は忙しくなります。

千里山田緑地の広い範囲に、夜になるとヒメボタルが発光しながら飛び始めるため、毎夜八〜一〇時の約二時間、ルートを決めて五〜七人ほどで発光数を調べているのです。もう今年で一一年目になります。

五月下旬のピーク時には、約七〇〇〜八〇〇匹のヒメボタルが乱舞し、大変きれいです。

日本人は蛍と聞くとゲンジボタルやヘイケボタルを思い浮かべ、水辺に飛んでいるのがホタルだと思っていますが、ヒメボタルは幼虫も成虫も陸上で生活し、餌も陸にすむ貝(オカチョウジガイなど)を食べています。そのため、山の中や竹林や雑木林で光っていることが多いのです。

成虫の大きさは七〜九oでヘイケボタルの一〇〜一二oに比べると小さいので、ヒメ(姫)ボタルと言われているのです。

ヒメボタルはフラッシュのような白い光を一秒間に二回ほどパッパッと出して光ります。ヘイケボタルのような緑色の光が尾を引くように光るのとは違います。

オスは空を飛び強い光でメスを誘いますが、メスは羽が退化し飛べません。草むらの上にメスが登り、オスの発光におしりを空に向けて弱い光で応えます。めでたく交尾した後、メスは産卵し、短い命を終えます。

小さな命いつまでも

千里高校の下の緑地(西山田緑地)にホタルが出ているという噂は昔からありました。しかし、夜はとても寂しい所なので、いつ頃からどのくらいの数が光っているのかは誰も調べる人がいませんでした。そこで、吹田自然観察会やすいた市民環境会議などのメンバーが相談してヒメボタル調査隊を結成したのが一九九八年でした。以来、毎年五〜六月中旬の約四〇日間は毎夜、雨でも二時間調査して歩いています。

最近は、地元のテレビや新聞にも取り上げられたこともあって、五月下旬のピーク時には狭い散策路が人で一杯になるほどの人気です。吹田の名所になってしまいました。

吹田に昔から住んでおられるお年寄りに聞くと、吹田が開発される一九六〇年頃までは、ヒメボタルだけでなくヘイケボタルもいたとのことです。そうすると、吹田の他の地区でもまだ昔ながらの林が残っている所には、ヒメボタルが飛んでいる可能性があると考え、西山田以外の地区にも調べに行きました。山田東の神社裏や竹藪、墓地、千里山高塚、佐井寺の竹林、月ヶ丘の雑木林など、なんと一〇ヵ所の地点で、数は少ないもののヒメボタルが光っているのを確認したのです。

ヒメボタルはメスが空を飛べないので移動が少なく、昔ながらの雑木林が残っていて、夜が暗ければ、生きのびている可能性が高いこともわかりました。

ただ、それらの小さな緑地も、マンションや宅地に変わりつつあります。小さな命のヒメボタルがいつまでも吹田のあちらこちらで光っている自然環境を残したいものです。

(2008/05/10)



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