「バター不足」から見える日本の農政 奥野和夫(関西よつ葉連絡会・淀川産地直送センター)
安心できる食生活を手にするために
日本各地で、バター不足が深刻な問題となっています。みなさんはなぜこのような事態になっているのかご存知でしょうか。
今となっては様々な要因が絡んできていますが、もともとは2000年頃からの牛乳消費の低迷にありました。少子化の影響や、「牛乳は体に悪い」などの説が流れたりもして、生乳自体が大量に余ってしまう形となりました。
生乳からはいろいろな乳製品が生まれています。チーズ、バター、ヨーグルト、アイスクリームなどはその代表格です。製造工程上、バターを作る際には脱脂乳ができます。これを乾燥させると脱脂粉乳になります。これまで余った生乳は加工にまわされることで調整され、在庫をかかえていました。
ところが2006年に、「脱脂粉乳の在庫量が限界に達した」ということで、生乳1000tが加工にまわされることなく廃棄される形となりました(今の世の中、脱脂粉乳を大量に消費することはあまりないですからね)。
また乳牛を淘汰することで、乳量減産3ヵ年計画を国が政策として打ち出したり、今後さらに需要の拡大が見込まれるチーズを、「国内向けで流通できるように」と大規模なチーズ工場建設が進められてきました。
急な増産ができない乳製品
一方海外に目を向けると、急激に経済成長を続ける中国やロシアなどで乳製品の需要が拡大。そうした中、乳製品輸出国であるオーストラリアで大規模な干ばつが続き、乳牛の搾乳量が激減し、乳製品の国際相場が急騰しました。そのため輸入品バターを使用していた国内大手メーカーがこぞって国内産バターに手を出す格好となり、国内バターの需要が拡大。そもそも生乳は需要の多い飲料用やチーズ用に優先的に使用されるため、バターが真っ先に打撃を受けた形となっています。
このような現状を踏まえ、国もバター増産などの緊急措置を打ち出してはいますが、なかなかすんなりとはいかないでしょう。ご存知のように、牛も人間と同じ哺乳動物の仲間なので、子牛が生まれなければ乳は出ません。通常、子牛が生まれて乳が絞れるようになるまでに2〜3年はかかりますので、長期的に見ていかなくてはいけません。まだまだ混乱は続きそうです。
今回のバター不足から、「日本における農業政策の根本的な見直しが必要ではないか」と感じているのは私だけでしょうか。私たちが普段口にしている食べものを海外からの輸入に頼っている現状は本当に考えものです。次回は、食料自給率の現状について書いていきたいと思います。
(2008/07/10)