吹田の生き物と人C-クマゼミとアブラゼミ 高畠耕一郎
割合でわかる地域の緑地環境
夏休みに入る頃、早朝から「シャーン・シャーン」とうるさく鳴くクマゼミの声が、自宅前の公園の樹からよく聞こえます。でも、この鳴き声もお昼を過ぎるとぴたりと鳴き止みます。
いつから、こんなにクマゼミが増えたのでしょう。私が子どもの頃、大阪市内に住んでいましたが、こんなにもクマゼミはいませんでした。セミといえば、羽が茶色で「ジィージィー」と油を揚げているような声のアブラゼミか、「チィー」と細くて高い声で鳴くニイニイゼミが多く、クマゼミを捕まえると、ちょっとした自慢でした。約6〜7pもあり、大きくて、羽が透明で、樹の高いところに留まるため、小学生には捕獲しにくかったのです。
クマゼミの幼虫は、樹木の根から養分を吸って成長します。地面の中に5年〜8年すんでいて、5回ほど脱皮を繰り返し大きくなって、夏の夜に地面から出てきているようです。
地面から出てきているセミの幼虫やセミの羽化を見たことがありますか? 吹田自然観察会では、毎年夏になると「セミの羽化観察会」を吹田市内の公園で実施しています。毎年100名近く参加する人気の観察会です。夕方6時頃、地面の穴から出始め、薄暗くなる7時頃には、木に登って羽化を始めます。セミの成虫になるまで約1時間の脱皮の姿は感動ものです。子どもは目を輝かせて観ていますし、お母さんは産みの苦しみを思い出しながらセミに「頑張れ!」と、声援を送っています。セミの誕生ドラマはとても神秘的で生き物が精一杯生きようとしている姿は、生命の大切さを体感する絶好の機会になっています。
セミは、オスしか鳴きません。そのため成虫を捕まえてお腹をみると、オスは腹弁という鳴く器官を持っています。メスは、真ん中にしっかりとした針の産卵管が見えます。
南方系のクマゼミ
最近、大阪ではクマゼミが主流になり、大阪市内の長居公園では発生するセミのうち9割以上がクマゼミとの報告もあります。
吹田市では、1996年の夏に学校、生協、ボーイスカウト、吹田自然観察会などが大規模な「セミのぬけがら調査」を実施し、2004年にも学校関係者でおこなっています。前ページの表が結果です。 調査した地域は少し異なるところもありますが、両方とも吹田市内で約5000の抜け殻を調べています。クマゼミが2004年には57・5%になり、逆にアブラゼミが35・5%に減っています。
このセミのぬけがら調査では、セミの種類によって地域の自然環境がわかります。クマゼミは南方系のセミで、神奈川県より北には生息していません。東京にクマゼミは、ほとんどいません。気温が高く、緑地が少なくて地温が高くなる運動場のような場所にある木の下にもすんでいますす。一方、アブラゼミは、全国に分布していて、寒さにも強いのですが、緑が少ないところでは生息数が減ることが知られています。環境省が1995年に身近な生き物調査をした結果でも、関西以南地域では森林にはアブラゼミ、都市公園にはクマゼミが多いことが証明されています。
吹田も同じで、緑地の多い万博公園は、アブラゼミが大半でクマゼミはほとんどいません。逆に、吹田市南部JR吹田駅や江坂付近の学校や公園は、クマゼミが圧倒的に多いのです。
皆さんの地域で、この夏、クマゼミとアブラゼミのどちらの抜け殻が多いか調べてみてください。それによって、緑地環境が見えてきます。
(2008/07/10)