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ベニイトトンボ (イトトンボ科)
紅色のイトトンボで、水草の中に卵を産む。本州、四国、九州の自然豊かな古い池に生息し、6〜10月に成虫(トンボ)として見ることができる。
 

吹田の生き物と人D-ベニイトトンボと池の環境 高畠耕一郎

吹田市には、ベニイトトンボといって、大阪府のレッドデータ=準絶滅危惧種に指定されている、紅色をしたイトトンボの仲間がひっそりと生息しています。

ベニイトトンボは本州、四国、九州に分布し、国の絶滅危惧U類(VU)=「絶滅の危険が増大している種」にも指定されています。

吹田市のベニイトトンボは、吹田自然観察会世話人の、昆虫好きな人が西山田の池で発見しました。また、吹田市内にもっといるのではないかと考え、吹田市の18ヵ所の池周辺を2005年の春と夏に本格的に調査し、5ヵ所の池でベニイトトンボが生息していることを確認しました。これは大変貴重なことで、朝日新聞にも大きく掲載されました。

成虫(トンボ)・幼虫(ヤゴ)とも、丘陵地から平野部にかけて、水生植物の多い古い池や沼・流れの穏やかな川などに生息します。トンボの腹長は27〜33o、体全体が紅色でオスの方が濃い体色。6月頃から羽化し、トンボは10月頃まで見ることができます。交尾は水面の植物上で行われ、オスとメスが連結したまま、水草など植物組織内に産卵します。

自然環境の指標になるトンボ

このベニイトトンボは、自然豊かな場所にしか生息しません。ヤゴの幼虫時代は池の中で、成虫のトンボになると池と周辺の雑木林で、餌となる小さな昆虫を捕獲して食べています。

つまり、トンボは池の水中と周辺の林の2つの違う環境で生活するため、水質が悪化したり雑木林がなくなると、またたく間に棲んでいるトンボの種類が変わります。このベニイトトンボが生息していれば、「その周辺の環境は自然度が高い」と言えるのです。

トンボから見た池の自然度

『トンボの調べ方』(文教出版、2006年)では、トンボの生息種によってため池の自然度を表す環境指標として、「トンボ別指数」を発表しています。例えば、ベニイトトンボ8点、オニヤンマ・チョウトンボは4点、ギンヤンマ2点、シオカラトンボやウスバキトンボは1点と決めています。この点数の合計で、そのため池の自然度が測られるのです。

これらの基準で吹田市のため池の自然度を計算したのが、図の「池別環境指数A」です。(Web版では未公開)

千里山田緑地にある海老池が44点で第1位。北千里の阪大構内にある犬飼池が39点で第2位。千里山田緑地の高町池が32点で3位でした。

これらの池は、ベニイトトンボがいただけでなく、トンボの種類数も多く、確かに水生植物も多種が自生し、周辺も自然緑地に囲まれています。一方、ランクの低かった池の多くは、護岸がコンクリートで固められていて、周辺には林もない池です。

トンボなどの身近な小さな生き物は、棲んでいる環境の変化が致命的な影響を受けることがわかります。トンボは自然環境の変化を、私たちに教えています。

(2008/08/11)



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