新聞の作り方「広告収入の減少」- 石塚直人
テレビ局・新聞社の経営危機
大学で教える知人に頼まれ、「新聞の今」について学生たちに話す機会があった。同じようなテーマの本やエッセーは、現役・OB記者の手になるものを含めかなり多い。ただ「最新の」ということなら、どうしても外せない項目がある。広告収入の減少だ。
電通によれば、07年の国内広告費は前年より1・1%増の7兆円余、うち新聞は5・2%減の1兆円弱。08年に入ると、目減りはさらに加速する。各社の広告は4月以降、前年同月比で軒並み10%以上落ち込んでいる。 新聞社の収入は、大雑把に言うと販売(購読料)が50%強、広告が30%強、残る10%強が事業・その他、とされる。ヒット商品が出たから大儲けする、といったことのない業種だけに、基幹部門でこれだけ減収となれば、経営はたちまち揺らぐ。インターネットの急成長が背景にある。
07年の広告費では、ネット広告の伸びが24%に達した。金額でも6000億円を突破し、雑誌を抜いてテレビ、新聞に次ぐ3位を占めている。新聞広告やテレビCMが一定地域の読者・視聴者全体を相手にするのに比べ、ネット広告は相手の性別や年齢、関心分野などに従って対象を限定でき、費用対効果が高い。
しかも自動車や家電などの業界では、自社のホームページを拡充することで、広告そのものを大幅に減らしている。 全国向けだったのを東京圏に限定する、などの例も増えた。
模索が続く対応策
長い間、新聞は「紙面に限りがある」として広告主の希望を断ることが多かった。掲載希望が多すぎて、広告料金も高かった。力関係の逆転は経済社会そのものの構造変化によるもので、単に広告局の担当者が頑張ればどうにかなる、というレベルの問題ではない。各社が協力して、たとえば「環境」をテーマに共同広告を提案する、といった試みも始まっているが、十分とは言えない。
「一見して広告でも、実際は自社の出版物の宣伝といった例が増えている。他から広告が取れないためで、これでは新聞社の収入にはならない」と学生たちには説明した。広告なしで記事だけの紙面は読みにくい、という理由もある。
新聞社同様、広告収入の落ち込みが目立つ民放テレビのキー局各社はこの夏、相次いで役員報酬のカットを決めた。それぞれ今後一層、リストラは避けられないだろう。
(ここまで書いた8月4日朝、ロシアの作家ソルジェニーツィンの訃報に接した。プーチン礼賛?の最晩年はともかく、それまでの偉大な闘いの生涯には感嘆を禁じ得ない。合掌)
(2008/09/10)