リレーエッセイ「視覚障がい者って全く見えないの?」-三原ひろみ
先日、視覚障がい者について話してもらいたいという依頼がありました。いつもは大まかなテーマ(例えば障がい疾病・心理など)が決まっているのですが、今回はただ、「介護職を目指す人たちに視覚障がい者のことを伝えてほしい」ということだけで後は何も決まっていなかったのです。こんな形の講義の依頼は初めてで、しかも3時間講義ということで、直前まで不安でいっぱいでした。
事前に講義の参考資料として、受講生にどんなことを聞きたいかアンケートをしてもらっていました。アンケートの中でも衝撃的な質問は「見えていないというのは、黒色の暗い世界か?」「朝、昼、夜の認識は、何でするのか?」でした。これを見た時、視覚障がい者=見えない人という認識なのか…と何となく重たい気持ちになりました。
また、別の時には旅行先で大浴場から白杖を使いながら部屋に帰っていると、同じ所から出て来た人が「見えないのにすごいねぇ。私たち見えている人でもここはややこしくて分かりにくいのに」と言われました。
これをヒントに私はみんなに何を伝えればいいか、イメージを膨らませていきました。結論として、視覚障がい者は「見えない人」だけでなく、「見えにくい人」もいること、人それぞれ見え方や見える範囲が違うことを中心に伝えました。
また、視覚障がいは情報障がいでもあることから、話を聞くだけではなかなかイメージしてもらえないかなと思い、実際に目からの情報がない状態を体験してもらうことを考えました。
以前、ある所で視覚障がい者のガイドヘルパー養成講座の話をした時に、主催者がレジュメを配るのを忘れていたことがありました。私は、レジュメがあると思って話していましたが、どうも受講生の様子が変なことに気がつきました。後でレジュメがないことを知ったのですが、「これはなかなか面白い!みんな必死で聞いている」と妙な達成感がありました。そこで、今回はあえてレジュメなしで講義を聴いてもらうことにしました。
それに加え、一人が絵葉書きを見て言葉でその絵を説明し、その他のアイマスクをした人がそれを聞いて絵葉書きの絵を想像するという疑似体験を3種類の絵葉書を使ってしてもらいました。
情報を伝える側の人からは、「言葉だけで相手に分かるように伝えるのは難しい」などの声が聞かれました。また聞く側の人からは、「色はどうか」「葉書きは縦、横のどちらか」「木は垂直か水平か」など活発な質問が飛び交っていました。
今回はとりあえず私の目標達成!これからももっと視覚障がい者のことを知ってもらえるように、いろいろな人と触れ合っていこうと思います。
(2008/10/29)