吹田の生き物と人F-吹田のドングリ 高畠耕一郎
吹田市では、9月中旬からコナラなどのドングリが落ち始めます。ドングリでよく見かけるのは、自然の残っている神社などに多い落葉樹のコナラ・アベマキ。常緑樹ではマテバシイ・アラカシが、街の小公園やマンション・学校の庭に植栽されています。その他にもシイ・シラカシ・ウバメガシ・クヌギなどが植えられています。どれもドングリで子孫を残すために果実をつくっているのです。大きさも形も少しずつ違います。
吹田市で最大規模に雑木林が残っている紫金山公園には、ドングリのなる木としてコナラ・アベマキ・アラカシ・クヌギ・シイの5種類があります。クヌギは公園緑化で最近新しく植えられたのですが、その他は、かなり昔から里山の風景として存在していたでしょう。
細長いドングリの実をつけるコナラという木は、里山を代表する木です。根元近くから切っても、萌芽再生力が強く、枯れないで10数年もすれば、薪の太さになり、燃料になっていたのです。ガスや石炭がない昭和30年頃までは、農村部では重要な燃料として利用されていました。また、クヌギやアベマキも炭の材料として積極的に植えられ管理され育てられていたのです。これらは皆、大きなドングリの実をつけますので、里山にはドングリがたくさん落ちていたのです。
どのドングリも子ども達の人気者です。幼稚園の児童が拾っているのをよくみかけます。園に帰ってドングリに色塗りをしたり、目玉も描いたりして飾っています。
「どんぐり祭」
私が事務局長をしている吹田自然観察会では、19年前から、この紫金山公園で「どんぐり祭」というイベントを10月末に毎年実施しています。近隣の親子約200人が参加しています。
内容は、山でドングリを拾い、ドングリ工作・ドングリ味見体験・長い紙をつけてドングリ飛ばし・ドングリコマ回し大会・ドングリで的当て挑戦・ドングリの植樹・ドングリクイズなど、ドングリを使った様々な遊びに挑戦しています。素朴なドングリ遊びに、親子で1日中熱中してしまいます。
このような紫金山に自生している植物で親子がいろんな遊びをすることで、紫金山の自然に親しんでいます。紫金山は他の新設の都市公園にない里山的な自然がたくさん残っている場所だということが、遊び体験を通して理解されてきます。
どんぐりを食べる
中でも人気があるのが、ドングリを食べることです。シイの実が一番おいしくて、生でもおいしく食べる事ができます。2番目においしいのは、大きくて食べ甲斐のあるマテバシイです。
マテバシイは街路樹やマンションの庭などに多く植栽されています。このマテバシイは、フライパンなどで煎ってやるとおいしく食べることができます。 どんぐり祭では、この2つを目の前で煎って食べてもらうのですが、最近の親子は「これ食べられるの?」と口に入れるのをためらう人も多くいます。しかし、おいしいと言っている人を見ると食べる人もでてきます。縄文時代は、このドングリが貴重な人間の食べ物でしたので、地下に穴を掘って大量に保存していたそうです。大阪の歴史博物館や自然史博物館には、実際に地下から出てきた大量のドングリの様子を模型で表している展示があります。
吹田では紫金山のように「ドングリ」が多くある緑地は、千里北公園、新芦屋、西山田緑地の一部、垂水神社の裏山などごく限られた場所になってしまいました。
(2008/10/29)