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新聞の作り方-限界感じる当局発表だけの記事- 石塚直人

オバマ新大統領誕生と不当逮捕

1月4日は歴史的な日となった。米国大統領選で、初めてアフリカ系黒人のオバマ氏が当選したからだ。結果は事前に予想されていたが、それでもこの国の歴史を少しでも知る者にとって、その衝撃度が減じられるわけではない。長く悲惨な「アンクル・トム」の時代、キング牧師の有名な演説「私には夢がある」、さまざまの思いがよぎる。

当選が決まったのは日本時間の5日1時過ぎ。私の勤める新聞社(大阪本社)も、東京の国際部と電話でやりとりしながら大量の原稿を受け、選挙人の獲得数など刻々と変わるデータを更新した。締め切りの早い夕刊3版紙面の1面凸版見出しは「オバマ氏勝利確実」だったが、印刷の途中で「米大統領にオバマ氏」に差し替えた。

2期8年続いた共和党ブッシュ政権は、「テロとの戦い」を掲げて世界に介入、アフガンやイラクを泥沼にする一方で、国内外に空前の経済格差を生み出した。その新自由主義に基づく経済・金融政策が破綻したことも、政権交代を後押しした。オバマ氏の政策にはアフガン増派などタカ派色も見えるけれど、「CHANGE(変化)」を求める巨大な世論のうねりが今後どう展開するか、は興味深い。

旧態依然とした日本の政治

それに比べわが日本では、旧態依然の「政治」が続く。10年前の地域振興券の失敗に懲りず、またもバラマキ「給付金」が出てきた。「2兆円で票を買う」と週刊誌の見出しにある通り、景気浮揚よりは目前の支持率アップだけが狙いと見える。休日の高速道路を1000円で走り放題とする案など、環境への配慮を欠く愚策そのものだ。

本気で経済を立て直そうとするなら、雇用の拡充が最大のポイント。しかし、フリーター全般労組などが呼びかけた麻生首相の「62億円豪邸 見学ツアー」参加者3人が都公安条例違反などの容疑で逮捕された事件(10月26日)は、この国の権力が非正規雇用労働者の運動をどんな目で見ているかをはっきりと示した。

朝日、産経などは「無届けのデモ行進に繰り返し警告したが」従わなかった、と警視庁公安部の発表のみで報道した。同労組などはこれに対し「所轄署の指示通り、メガホンや旗も使わず静かに歩いていた」と反論、現場の映像をネットで公開した。画面で見る限り、警視庁の言い分には無理がある。

なぜ普通に歩いていて逮捕されるのか。しかも3人は12日間も拘束された。グループの集会報告によれば、動画は6日までに18万回のアクセスがあり、全国から80万円のカンパが寄せられ、国会議員の鈴木宗男氏が質問主意書を出すなどしたという。若い知人の「はにかみ草」など、救援活動を後押しした多くのブログの活躍を見るにつけ、当局発表だけの記事の無神経さには、大きな限界を感じざるを得ない。

(2008/12/10)



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