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リレーエッセイ:精神障がい者を取りまく10年〜轟広志

波乱の1年

お久しぶりです。昨年は「八尾・柏原の精神障がい福祉を考える市民の会」通称「きゃらふる やおかし」の10周年記念イベント「きゃらふるとエポ再会」を春に開催することができ、成功のうちに無事終了いたしました。わざわざ八尾市まで足を運んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。

昨年を振り返っても色々あった1年でした。私が統合失調症を発病し、初めて精神科の門をくぐった時は、たまたまお正月明けでアルバイトが休みの日でした。しんどかったけどアルバイトだけは辞めれないと思い込み(上司にも言われてましたし)病院の医師によるDrストップがかかるまで、アルバイトを続けていました。ところが、日本政府のトップである内閣総理大臣が、2人続けて突然の辞任。「えっ! 総理大臣て辞めれるんやぁ…」。びっくりしました。絶不調の身体で神経をすり減らしアルバイトを続けていた私…。「何してたんやろ?」

まぁ今の政局で総理大臣の旨味を取るのも難しいか?とか、真面目な話、日本の行く末を案じたりもしました。

そして、東京秋葉原での無差別殺人事件、大阪でのひき逃げ被害者引きずり死亡事件、さらに厚労省、元事務次官殺傷事件。多くの暗く嫌な事件が、続きました。

平等に裁かれる権利

思い出すのは、あの大阪池田小学校事件です。連日ニュースでは「精神鑑定」「精神病院通院歴」の見出しが踊りました。

昨年の事件では、そういう興味本位の報道は見なかった気がします。それは精神疾患が障がいと認められて10年の歳月が流れたせいかも知れません。しかし、まだ多くの人が誤解しているとは思います。正直言って精神疾患は、とてもしんどく、あんな行動や準備、計画を実行できる状態ではありません。もっと内省的な苦しみであり、家族にさえそのしんどさをうったえる気持ちになりません。独りで抱え込み独りで苦しむのです。

私は、仮に病的症状が原因で、なんらかの犯罪を起こしたとしても(ほとんどは自分への傷害や死です)、その罪は問われるべきだと思っています。

人が人を裁く法のもとで、なぜ精神病者だけが裁かれないのか?そんな法律ができた経緯も知らずに生意気を言うようですが、精神病者であれ平等に裁かれる権利があるはずです。あと10年もすれば、こんな特例的な法律も形をかえていると信じています。

そういう意味でも池田小事件の犯人の異例な早期死刑執行は残念な気がします。彼は精神病を装い、自分勝手な復讐で多くの子供の命を奪ったのです。早期の死刑執行は、最後まで彼の望み通りだったでしょう。

そして、さらに生きにくい現在の日本。彼の真似をしたがる人が、大勢いるような気がします。「最後に一花」とナイフを用意し「誰でもよかった」と殺す。

本当の精神障がい者とは、ほんの少しのごく当たりまえの望みも叶えられず、毎日を静かに暮らしています。

(2009/01/12)



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