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コバノミツバツツジ
(ツツジ科ツツジ属)

低山に多い落葉低木。高さ2〜3m。本州の中部以西、四国、九州に分布し、関西地方には普通に見られる。早春、葉の開く前に枝先に2〜3個の紫色の花を開く。

▲コバノミツバツツジ保護のための里山管理作業

吹田の生き物と人- 「コバノミツバツツジ」 高畠耕一郎

コバノミツバツツジ

吹田市のほぼ真ん中にある紫金山公園の雑木林には、3月末からコバノミツバツツジという低木に薄紫色の花がたくさん咲きます。

この時期は下の公園にもソメイヨシノがたくさん咲き始めます。山の中と公園の両方で花がきれいに咲くので、近くの人がたくさん訪れ、花見場所として新名所になりつつあります。

コバノミツバツツジは「小葉の三つ葉ツツジ」という意味で、枝先から小さい3枚の葉が出ていますが、3月末にサクラのように葉が出るより先に花が咲くのです。たくさん咲くと薄紫色が目立ち、とてもきれいです。他の木々が花を咲かせていない里山の中で、もう春だよと告げてくれる木です。

近畿・中国・四国・九州に分布しており、サイゴク(西国)ミツバツツジ、トウゴク(東国)ミツバツツジ、トサノ(土佐の)ミツバツツジなど、全国に似た木がたくさんあります。

明るい里山で育つ木

いわゆる里山林で、人間の手が入り高木が刈られた明るい林で良く育ちますが、大きさは2〜3mほどです。花はラッパのような筒状で先が5枚に深く分かれています。雌しべは長いのが1本あり、雄しべは10本あります。つぼみの時は立っていますが、花が咲くときは横向になって咲きます。花の中に水がたまらないようにして、昆虫が花の中に入りやすくなっているようです。

雌しべも雄しべも花びらの方向に先が曲がっています。曲がった先の花びらには、よく見ると少し模様がついています。この模様が昆虫にとっては大事で、模様の根元に入っていくと蜜が隠されているのです。そこを目掛けて虫が入ってきますが、雄しべもその方向に曲がっているので必ず花粉を虫に付けてしまいます。そして、別の花に行くとそこの雌しべにその花粉を付けて受粉を助けているのです。いわゆる虫媒花で、こんな小さな花にも虫を呼ぶ機能と花粉を付けさせる工夫が備わっているのです。 枯れかけていた

枯れかけていたコバノミツバツツジ

私たちは、紫金山に自生しているこのコバノミツバツツジを特に大切にしてきました。昔から紫金山にたくさん生え、春先には全山このコバノミツバツツジに覆われ、紫色に染まったそうです。紫色に染まる山という意味で紫金山と言う名で愛されてきたのでしょう。近在の村人にとっては花見と言えば、紫金山のコバノミツバツツジの花のことだったそうです。

コバノミツバツツジは日光がたくさん当たる場所でないと花芽にならない植物なのです。日光が少ないと葉芽になってしまうのです。しかし、紫金山は戦後、石炭などの化石燃料が普及すると、近隣の村の人は薪を燃料としなくなったため、山で芝刈りをしなくなりました。そのため、コナラやアベマキ、ヒサカキ、クロバイなどの雑木が刈られなくなって大きく育ち、1970年頃(昭和40〜50年頃)には日光を遮るようになり、林の中に陽が当たらない暗い林になったのです。そうなると紫金山のコバノミツバツツジは花が咲かなくなり、年々弱っていきました。

吹田自然観察会がその事に気付き、紫金山にコバノミツバツツジの花を咲かせようと、大きくなりすぎた樹を一部刈り取る里山管理を提案しました。

それが吹田市に認められて、コバノミツバツツジの復活作業をすることになり、現在は市民ボランティアの「紫金山みどりの会」が、冬場、月1〜2回の里山作業をしています。

その甲斐あって、最近は3月末になるとたくさんのコバノミツバツツジがきれいな花を咲かせるようになりました。今後も里山管理を続けてコバノミツバツツジを守っていきたいです。

(2009/03/18)



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