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新聞の作り方--安全保障をめぐる報道に違和感 石塚直人

差別そのままに偏見広がる

「日本に落下する可能性は極めて低い。国民の皆様には動揺せず、平静に日常生活を送っていただきたい」。政府がこうコメントする中、3月末からしばらくの間、各メディアの報道は北朝鮮一色に塗りつぶされた。しかも、最初から「人工衛星」ではなくミサイル目的とされた。4月5日には、多くの社が「ミサイル発射」の大見出しで号外を出した。

なぜそうなったのか、よくわからない。政府は10日になって、それまで使っていた「飛翔体」をミサイルと呼び変えたが、官房長官は「最終確認はまだ」と付け加えている。今回の発射が、弾道ミサイル関連計画の停止を求めた国連安全保障理事会決議に違反しているとしても、これ自体がミサイルだと断定する証拠はないからだ。外国メディアは「ロケット」などとしていた。

ロケットなら単なる推進装置で、ミサイルはその先端に弾頭をつけたものだ。客観的には、やはりロケットと呼ぶべきものではなかっただろうか。

拉致問題が表面化して以来、北朝鮮を巡る報道や論評に、これと同様の違和感を持つことが増えた。戦前戦中から続く民族差別が十分に解消されないまま、「あの国ならやりかねない」といった偏見がとめどなく広がり、タカ派の議論に勢いを与えている。ふだんなら政府当局者の用語に合わせて原稿を書くことの多い日本のメディアが、あえて先走りを演じた格好の「ミサイル」には、不吉な印象を禁じ得ない。

昨年あたりから急にソマリア沖の海賊対策で「国際協調」が叫ばれ、大きな反対運動もないまま自衛艦が現地海域に赴いた。今回の背景にも、米国と歩調を合わせたミサイル防衛システムの本格発動がある。未曾有の不況が進む中、4兆円とも言われる開発費を「惜しくない」とするための世論作りでは、とも邪推したくなる。

ミサイル防衛では、大臣経験者の1人が「当たりっこない」と口走り、自民党の国防部会などで批判されたが、政権内にもあるそうしたホンネは危機意識が煽られる中でかき消された。自民・自公政権には批判的とみられてきた朝日も、1面の「天声人語」で4月5日、6日と北朝鮮批判を続けるなど、他社と同じ論調になった。

胸痛む在日コリアンへの抑圧

データによれば、北朝鮮の軍備などたかが知れている。朝鮮戦争を巡って米国とまだ休戦状態でしかないのに、軍事費は米国の1%弱、日本の12%、韓国の22%。在日・在韓米軍基地に核兵器がないとは信じがたい。いつイラク・フセイン政権の二の舞になるか、怯えているのはむしろ北朝鮮であり、日米韓の軍拡によって彼らのそれを抑えることはできない。

国内に60万人の在日コリアンたちにとっても、日本のメディアから感じるのは敵意にも似た圧力だろう。本当はそうではないんだよ、と胸を張って言えないのがつらい。

(2009/05/15)



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