吹田の生き物と人R-クズ(葛) -高畠耕一郎
秋の七草
9月も中旬を過ぎると、クズの蔓が建物のフェンスや平野部の斜面にからまって拡がっているのをよく目撃します。大きな三枚のスペードの形の葉が蔓から出ていてマメ科特有の紫色の花をあちらこちらに付けるようになります。秋の七草の一つでもあります。
このクズの葉は、夏の暑いときは、葉を広げるのではなく、直射日光に当たらないように、葉をたたむように動き両側の葉が折れ曲がってしまいます。葉は、白色の裏を日光に向ける状態になり、強い日光を反射させているのです。葉から水分が出すぎないための工夫の一つのようです。ネムノキやメドハギなどマメ科の植物には同じような現象を見ることができます。フェンスなどに巻き付いている葉を一度、よく見てください。
クズは大変繁殖力が強く、木にも巻き付いてしまうので日本では、林業関係者はこのクズを刈り取るのが重要な仕事になります。吹田のような都市部でも、少しでも空き地があるところや手入れの行き届かない公園地では、クズがはびこっています。
ところで、「はびこる」を漢字で書くと「蔓延る」で「ツルがのびる」と書くのです。昔からクズのツルが伸びていく様から、一杯にひろがる様子などを表現した言葉になったのだと知りました。
アメリカでは害草
アメリカの南部では荒れ地に生育する植物の1つとしてクズが選ばれ、裸地の緑化に用いました。Kuzuは英語名にもなっています。茎を挿し木することによって簡単に殖やすことができるので、当初は緑化に成功したのです。しかし、小屋を覆い尽くすほど増えすぎて、今度は害草に指定し、駆除の対象になっています。世界的にも、2000年に国際自然保護連合(IUCN)の保全委員会は「世界の侵略的ワースト100」を発表していますが、その中にクズも入っています。
今や世界中で嫌われ者になっているクズですが、昔の日本では有用植物で飼料になったり、根から摂れるでん粉は葛粉として利用しました。葛根湯はこの葛粉から作られています。また、葛のつるは丈夫で、昔は、籠などを作るのに普通に使われていました。
(2009/10/12)
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