メディアはどちらを向いているのか? -石塚直人
メディアの主体性問われたビラまき有罪判決
共産党のビラを配るため東京都葛飾区のマンションに立ち入ったとして、住居侵入罪に問われた僧侶(62)の上告審判決で、最高裁は弁護側の上告を棄却した(11月30日)。
被告は2004年12月、昼過ぎに各戸のドアポストに共産党の都議会報告を投函していたところを110番通報で逮捕され、23日間身柄を拘束された末に起訴された。1審は無罪判決だったが、2審・東京高裁は逆転有罪、罰金5万円を言い渡していた。
最高裁判決は、マンションの管理組合が区公報以外のビラやチラシの投函を禁じていたことなどを挙げ、被告の行為が「住民の私生活の平穏を侵害する」と断じた。これに対し、読売と朝日が「表現の自由を萎縮させる恐れがある」「捜査当局には慎重さを求めたい」などと主張したのは、さすがに言論機関としての面目を保ったと言える。朝日は、国連の自由権規約委員会が昨年、ビラの投函による逮捕・起訴について日本政府に懸念を表明したことも紹介した。
長期間の身柄拘束に「ビラ配りを萎縮させる側面があることは否定できない」とまとめた毎日の解説には、客観的過ぎて不満が残る。それは悪だという思いが伝わってこない。捜査当局が行き過ぎとの見方を紹介しつつも、結論としてはビラを配る側に「配慮が求められる」とした産経は、全くの論外だ。
「市民の市民による市民のためのメディア」をうたう「JANJAN」12月4日号は、「葛飾ビラ配布事件・最高裁判決文の真相」として、この判決文が高裁の判決文と、裁判長自身が昨年4月の立川自衛隊官舎ビラ配布事件で書いた判決文をそのまま引用した産物であると喝破し、弁護団の上告趣意補充書を無視した「不誠実かつ軽率な姿勢」を厳しく批判している。ネットで見ていただきたい。
(2010/01/05)
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