特集:吹田市で強引な呼称変更
強引な「障がい者」呼称変更 その前にすべき事が山積み
吹田市で、「障がい者」の呼称変更が強引に進められています。阪口吹田市長は、09年3月議会で「障がい者という表現の見直しを行いたい」、との施政方針を表明。同11月には、市報やHPに募集要項が掲載され、市民公募が始まりました。
市には、1ヵ月で80件を越える応募があったそうですが、障がい当事者・家族や障がい者団体等には、周知も呼びかけもないままで、まさに「寝耳に水」の呼称変更が進んでいます。
4月15日、「(検討作業の)一時中止を求める議会決議」を提案した池渕佐知子市議・六島久子市議に、ぷくぷくの会・細田・入部がインタビューを行いました。吹田市長が進める呼称変更について考えます。(編集部)
理念なき呼称変更
「呼称変更の前に、すべき事があるのではないか」と池渕市議は指摘します。「大切なことは、障がい者の皆さんが安心して自立して暮らせる吹田市に変えること。呼び方が変わっても何の解決にもならない」(同氏)からです。
六島議員も、「呼称変更が障がい者施策の充実につながるのならまだしも、繋がりは見えない」と首をかしげます。
呼称変更を推進する阪口市長の意図は何なのでしょうか? 「障がいは個人に起因するものではなく、社会の仕組みやまちのあり方など外界に存在するとの考えから、障がい者という表現の見直しを行ってまいります」―阪口善雄市長の施政方針演説(09年3月)の一部です。
両市議も「阪口市長の障がいについての基本的な考え方に異論はない。ただ、それが何故呼称変更に結びつくのかがわからない」と語っています。
多数の健常者が、社会生活を送れているのは、その身体特性に応じた社会のしくみやインフラ(道路・交通機関や施設構造)が作られているからです。
一方、障がい者が、日常生活を送るうえで様々な困難にぶつかるのは、社会が障がい者の存在を無視し、障がいを考慮した街作りをしていないからです。つまり、誰にとっても快適な街づくりができれば、「障がい」は、社会生活を送るうえでの障害でなくなるからです。
吹田市では、この市長演説に先立つ08年度に庁内で、「障害者」の呼称変更に関する検討会議が作られました。しかし、職員からの応募も少なく、結論が出ないために、09年2月、「『害』という字の印象の悪さと、心のバリアフリーを推進する観点から」(吹田市・福祉保健部長の議会答弁)、「障がい者」と一部ひらがな表記することが決定され、4月から実施されました。
ところが吹田市長は、秋になってあらためて呼称変更への作業を指示。11月1日の市報で突然新呼称の公募を始めたのです。市内の障がい者団体にとっては、まさに寝耳に水でした。
このため「吹田の障がい者福祉と医療を進める会」(会長・馬垣安芳)は、1月末に、一時中止を求める要望書を提出しました。理由は、@「理念なき呼称変更」は無意味な議論である、A実際には、「障がい者施策の削減」が進められようとしている、B障がい当事者・関係者が参画していない「当事者不在」であることなどです。
吹田市議会も3月28日、「検討作業の一時中止を求める決議」を全会一致で採択しました。決議は、市長に対して「障がいのある人や家族・関係者からも丁寧に意見を集約していく必要がある」と、指摘しています。
(2010/05/27)
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