特集:自立支援法一部「改正」法案
支援法を守りたい厚生労働省官僚
障がい者自立支援法の一部「改正」法案が提案され、自立支援法延命が図られています。同法案は、障がい者自立支援法に代わる新たな総合福祉法を議論してきた「障がい者制度改革推進会議」や、その法整備のための「総合福祉部会」が積み上げてきた議論を無視し、大きな問題点を含むものです。
審議過程も、障がい者の意見を踏まえなかった自立支援法と同じで、当事者無視の民主主義に反する暴挙と言わざるを得ません。
「改正」法案は、国会期限切れで廃案となりましたが、再提案もありえます。審議過程をつぶさに観察し、抗議活動を続けてきた楠敏雄さんに、話をお聞きしました。(文責・編集部)
本格的制度改革への期待
昨年8月に民主党を中心とする新政権が発足し、障がい者施策は、根本的に変わると期待されました。それは、障がい者制度改革推進会議(以下、「推進会議」)の設置に象徴されます。これまで障がい者施策は、厚生労働省の官僚と政府に都合のいい学者によって構成される中央障がい者施策推進協議会(中障協)によって作られ、当事者の意見は「聞き置く」程度で、施策に反映される保障は全くありませんでした。
ところが推進会議は、委員の半数以上が障がい当事者及びその家族で、室長には車イス当事者である東俊裕弁護士が就任しました。審議の方法も、様々な障がいへの「合理的配慮」が実践され、障がい当事者が、地域で生きるために何が必要か?について協議を重ねてきたのです(まねき猫通信・93匹目参照)。
推進会議は、月に2〜3回というハイペースで着実に成果を積み上げていました。6月には今後の基本方針となる第1次意見書、12月には第2次意見書を障がい者制度改革推進本部に提案し、来年度の予算措置にも反映できるよう準備が進められているのです。
厚生労働省の反撃 自民・公明の横槍
このような動きを無視して、4月27日自民党・公明党が議員立法で自立支援法一部「改正」法案を提出しました。昨年3月解散のため廃案となった「改正」政府案とほぼ同じ内容で、厚労省官僚が入念に準備した自立支援法体制の維持を目的としたものです。
民主党政権は、3年後の8月までに自立支援法廃止と決めたはずで、それまで予算措置でやればよく、「改正」を通すことはないと私たちの多くは思っていました。ところが5月上旬、民主党は、「自民・公明との合意案の成立を目指す」とマスコミに発表。民主党の対案には「平成25年8月までに…障害者自立支援法の廃止を含めて…障害保健福祉施策を見直すまで」とあるものの、大部分は同じ内容でした。
5月27日、衆院厚生労働委員会では委員長が交代し、「厚生労働委員長案」として超党派でまとめた形で翌28日の委員会、6月1日の衆院本会議と矢継ぎ早に通してしまったのです。
(2010/07/15)
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