安心できる食生活−見直したい米食文化 -奥野和夫
米離れが進む日本の食生活
日本の伝統的な食生活を振り返る時に、日本の主食であるお米もまた外せないところです。残念ながら、日本では戦後の急速な食の欧米化の中で、米の消費量は急速な減少傾向にあります。
食の欧米化は、学校給食や洋食普及のためのキッチンカーなどの外的な戦略が主な原因でしょうが、1960年代には120キロあった年間一人当たりのお米の消費量は、今では半分の60キロまで減少し、その一方でパンや麺類などの小麦の消費量が増加してきています。
さらにお米の消費量が減少傾向にある中で、米余りが常態化している現状があり、これに輪をかけて自由貿易の名の下でMA米に代表される輸入米や政府の備蓄米の安値買い入れなどで、米価格が下落の一途を辿っています。(これでは米農家もたまったもんじゃありませんよね。)
専業で米を作っているだけでは到底食べてはいけないお米農家さんの苦しい台所事情がある中で、政府は、2010年4月から農家への支援を目指して、戸別所得補償制度をスタートさせました。簡単に言うと、米の生産数量目標を守っていれば10e当たり15000円と、今年の米価が過去3年の平均米価を下回った場合の差額分を助成するという仕組みです。1歩前進かもしれませんが、もう少し根本的なところでの問題解決が求められています。
過疎化や高齢化が原因で進んだ耕作放棄地は、すでに全国の農地の1割にあたる38万ヘクタールあるそうです。一方で、農地全体に占める水田の割合は54%、特に東北地方などでは71%を占めており、日本の農家にとって米作りが、いかに大切なものであったのかが、わかるのではないでしょうか。
米離れが進む中で「少しでも米食文化を取り戻そう」ということで、自治体によっては学校給食の中で完全米飯化を取り入れたところも出てきています。雑穀=五穀の思想―粟がなければ稗を食べ、稗がなければ黍や麦を食べて凌ぐというものーを基礎に、各地で様々な食文化の継承がなされてきた日本においては、白米を食べだしたのは、わずか80年前のことだったと聞きます。昔は「都会へ出るとお米が食べられるから」ということで、農山村から都会へ出ていく人々が多く見られたほど、米は貴重な食べものでした。
輸入されてくる食べものがたくさんあり、お金をだせば何でも買える今の世の中においては、あまりにも身近で当たり前にあるお米に対して、そんなに価値を見出せないかもしれませんが、私たちの食生活の基本であるお米にもっと関心を持って、今よりももっと食していきたいものですよね。
(2010/08/09)
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