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核廃絶に向けたせめぎ合い -石塚直人

戦勝国の広島平和式典参加

被爆65年の今夏、核廃絶を目指す世界の動きには加速が感じられた。広島の平和記念式典には国連の潘基文事務総長、米英仏の代表が初めて参加し、潘事務総長は地元中学生との交流会にも足を運んで子どもたちを励ました。米国が冷戦時代に67回の核実験を重ねた太平洋・ビキニ環礁が8月1日にユネスコの世界遺産に登録されたニュースも、忘れる訳にはいかない。

読売新聞(7日)によれば、仏臨時大使代理は、「何年も前から米英仏の大使館で出席について協議し、米国が出席しないなら英仏もしないと決めていた」とコメントした。個人としては被爆の惨状に心を痛めても、「同盟」が優先するのが国際政治というものらしい。

昨年 4月の米オバマ大統領「プラハ演説」以降、流れが変わり、それが3国の出席につながった。ロシアは11年連続で出席しており、核保有5ヵ国では中国の不参加が際立つ。

もっとも、英仏代表が式典の終了後、報道陣に犠牲者への追悼と核廃絶への意欲を熱っぽく語ったのに対し、米国大使は無言で会場を立ち去り、大使館を通じて形式的なコメントを出しただけで、長崎での式典には欠席した。各紙はこの背景に、「原爆投下を謝罪するなど、もってのほか」とする米国内の強い世論を指摘する。米国では保守派に牛耳られるメディアが大使の式典出席を批判的に論評、オバマ政権を揺さぶった。利潤のためには自国の経済的弱者を騙してでも戦地に追いやり、その後の面倒もろくに見ないこの国の支配層のおぞましさについては、私たちは例えば堤未果さんの「貧困大国アメリカ」などでよく知っている。彼らを何とかしない限り、核廃絶も世界の民衆の福祉も前進はしないのだろう。

大江健三郎さんが6日付の米紙ニューヨーク・タイムズに核抑止力論への憤りを寄稿した、と時事通信が報じ、「しんぶん赤旗」で読んだ。とにかく彼らの「偏見」の岩盤をわずかでも崩さねば、との作家の執念が感じられる。情けないのは「被爆者を非核特使に」などと語る一方で相変わらず「核抑止力は必要」と述べた菅首相。まだ目が覚めないのか。

(2010/10/06)

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