特集:無認可作業所への支援打ち切り?!
自立支援法の穴埋める柔軟な支援体制こそ必要
吹田市は、障がい者共同作業所運営事業補助金を打ち切る予定です。
無認可小規模作業所は、通所施設等の社会資源が圧倒的に不足しているもとで、障がいのある人たちの「働く場」「日中活動の場」として当事者・関係者自らの力で開設され、瞬く間に全国に広がりました。
吹田市もその重要性を認めて、運営費のみならず、重度加算や施設借上げ費補助、車両維持費補助などの積極的な独自施策を実施し、多くの無認可作業所が開設されてきました。
ところが自立支援法によりサービス事業が再編され、日中活動の場は、@就労継続支援、A就労移行支援、B自立訓練、C生活介護、D療養介護(以上、国の事業)と市町村が実施する3種の地域生活支援事業に再編されました。このため、旧来の通所施設等は、5年の間に新たな事業に移行することになっていますが、利用者数の問題や場所の確保の問題から、移行できない作業所もあります。
そうしたなか大阪府は、「財政再建プログラム案」で無認可作業所への運営助成を2011年度末で廃止を決定し、吹田市も同時期に補助金廃止を方針化しています。
「吹田の障がい者福祉と医療を進める会」(代表・馬垣安芳)は、廃止方針の撤回を求めて幾度となく市と交渉を行っていますが、膠着状態となっています。今号では、精神障がい者支援事業を運営する「のぞみ福祉会」の辻本考太さん、入澤隆一さんに聞きました。(文責・編集部)
精神障がい者の実態と合わない制度
辻本:「のぞみ福祉会」は、1988年に無認可共同作業所として活動を始めました。2003年に法人化して5つあった無認可共同作業所が小規模通所授産施設になり、内4つが08年に障がい者自立支援法による再編成で「訓練等給付事業」に移行しました。その際、約90名の利用者のうち、30名が「訓練にそぐわない」という理由で利用をやめて、在宅となってしまいました。移行後も、たくさんの利用者がやめられました。
原因は、障がい者自立支援法の枠組みが精神障がい者の実態にマッチしないからです。同法で支援活動は、訓練等給付事業と介護給付事業に分かれましたが、精神障がい者は「訓練」という言葉自体に拒否反応を覚えてしまうのです。
彼らが必要としているのは、「気軽に相談できる場所であり、寄り添ってくれる人」なのです。「それさえあればたいていのことは、自分でできる」とおっしゃる方もたくさんおられます。
入澤: 私の事業所では、「就労継続支援事業」として弁当作りをやっていますが、みんなが働いているので自分だけ休憩するわけにいかず、「調子が悪くて仕事ができない日は、通ってはいけない」という雰囲気ができてしまいます。
私達の法人では就労移行事業もやっているのですが、ここでは週4日以上、1日5時間以上の通所を基準にしているので、この事業の利用者は限られてしまいます。症状の重い方や高齢の方は段々居辛くなって、やめた人もいます。
時間外支援こそ重要
辻本: 事業所への報酬も実態に合っていません。介護報酬は、事業所に来てもらってはじめて発生するのですが、精神障がい者で毎日来所できるのは、少数です。生活訓練事業をしている「のぞみ工作所」で週5日通所できる方は1割位です。
ところが実際は、通所できない方へのサポートの方が重要ですし、エネルギーを使います。
滅多に来ない方から、「調子が悪い」と電話があれば、飛んでいって、症状が重ければ病院まで付き添います。病院同行となれば、半日位はかかりっきりです。
このように家族と生活全体を支え、事業所に来て頂くまでが重要ですが、こうした活動は支援と算定されず、手弁当となります。
この制度のなかで事業所運営はとても困難です。日中、職員は通常の訓練・支援活動をしますので、来所できない利用者の生活支援は、仕事が終わった夕方以降に、自宅に出向いて行っています。もう限界です。
(2010/12/10)
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