吹田の生き物と人37-モチツツジ -高畠耕一郎
ヒラドツツジとモチツツジ
吹田市では、4月中旬から5月初めに、「ヒラドツツジ」が町の中で、「モチツツジ」が昔ながらの緑が残っている山の中で、たくさんの花を咲かせます。
吹田市の木がツツジ科の「サツキ」になっているので、ツツジ科の仲間の「ヒラドツツジ」は、特に多く植栽されているのだと思います。
ヒラドツツジの方が花も大きくて、育ちやすいので、「サツキ」よりも多く植えられて目立っているように見えます。
一方、モチツツジは、野生の大型ツツジで、吹田市内では紫金山や西山田緑地、千里丘の元毎日放送近くの山、千里ニュータウン内に残された里山の公園内や春日に残る里山などに自然の低木樹として花を咲かせています。
モチツツジは、花の根元にある緑色のがくが、細かい毛に覆われていますが、それに触るとネバネバしたように感じます。そのネバネバ感がお餅を触っているように感じるので、モチツツジになったと言われています。
「受粉」成功のためのネバネバ
このネバネバは、小さな虫に対して「鳥もち」の役目を果たしているのです。地面からモチツツジの花の蜜をねらって上がってくるアリや小さな昆虫を防ぐためについているネバネバなのです。このモチツツジの雌しべの根元から出す「蜜」は大変なごちそうです。もちろんこの蜜は、ハチやチョウなどの昆虫が他の花の雄しべから付けてきた花粉を、自分の花の雌しべの先に付けてもらう(受粉)ために、雌しべの根元に用意している大事な蜜なのです。
ハチやチョウは、蜜標という花びらに付いている斑点模様をめがけて正面玄関から入ってくる歓迎すべき虫たちなのです。雌しべの根元にある蜜を吸うために、ごそごそとツツジの花の中に入り込んで行くために、その周辺にある雄しべの花粉を体に付けたり、別の花の雌しべにその花粉を付けたりするのです。それが受粉となり、ツツジの種をつくる基になります。これでツツジは、子孫繁栄ができるのです。しかしがくの裏から花びらに穴をあけて中に入り込み、雌しべの根元にある蜜を直接盗みとるアリなどの虫もいます。アリなどを追い払う能力のない植物は、みすみす蜜を盗られてしまいます。でも、このモチツツジは、がくの表面にある小さな毛にネバネバする液を出し、ちょうどハエ取り紙のようにアリたちの足が動けないようにしてしまうのです。
(2011/04/25)
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