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被災障がい者支援個別支援に重点を置き長期支援をやり抜きます NPO法人「ゆめ風基金」専務理事・八幡隆司

大震災から3ヵ月余り経ちました。障がい者の災害支援で活動するNPO法人「ゆめ風基金」(106匹目で特集)の常任理事・八幡隆司さんは、被災地に長期滞在して活動を続けています。

「こんな大きな災害でも、避難所へ行くことを諦めている障がい者が多いことに、改めて愕然としました」―こう語る八幡さんは、被災した障がい者を発見し、繋がるところから活動を開始しました。全国約70団体と協力し、岩手、宮城、福島3県それぞれに拠点となる事務所を開設。救援物資を届け、被災障がい者が生き続けられる道を模索し続けています。ゆめ風基金の活動について聞きました。

やっぱり避難所に障がい者がいない

地震直後に被災地に入り、簡単な打ち合わせをした後、改めて3月30日から長期滞在を始めました。当分帰ってくることはないと思い、大阪の自宅アパートは解約しました。活動を始める際に受けた最初の報告は、「避難所に障がい者が、ほとんどいない」というものでした。これまでいくつもの災害現場を経験してきましたが、「やっぱりここでもか!」と愕然としました。自宅に留まったり、なかまの所に身を寄せ、避難所へ行くことを諦めているのでした。  救援方針は、すぐに決まりました。@しんどい思いをしている障がい者を見つけ、A個人レベルの支援に重点を置くことです。大きな災害だからこそ、広い被災地の中で、どこにいるかわからない障がい者への出会いを求めること、を当初の方針としました。

いっしょに活動する県外からの仲間にも、@きちんと顔と顔が繋がる関係をつくる、A誰かと繋がったら、その先を紹介してもらう、B今日が大丈夫でも、2ヵ月後、半年後にたいへんな時もある。長期に渡る繋がりが大事と伝え、走り回りました。

障がい者の駆け込み寺を

宮城県の活動で感じたのは、仙台市はまだしも、その他の地域は福祉サービスを提供する事業所が極端に少ないことです。障がい児・者は施設入所が基本で、そうでなければ家族だけで抱え込むという現実でした。相談支援事業やグループホームの運営も、かろうじて社会福祉協議会が請け負っているという状況です。社協しかヘルパー派遣事業がないうえに、派遣される人はたいがい地元の人なので、家族のプライバシーが筒抜けになって、「2度とヘルパーは家に入れたくない」という経験談も聞きました。

そもそも「ヘルパー支援を受ける」文化がないのです。福祉サービスを提供する社会的基盤が貧弱ゆえに利用者が限られ、ニーズがでてこないのです。

このため、「困っている!」と気軽に言え、そのニーズに応えられるような「障がい者の駆け込み寺」が必要だと思いました。

宮城県には、ゆめ風ネットの一員である「CILたすけっと」が、早い段階から活動を始めていました。メンバー自身が事務所に避難しながらも、より多くの被災障がい者に支援物資を配るため「物資を届けます」というビラを避難所等に配布する活動を始めていました。

仙台市から離れた南の山元町や北の南三陸・石巻などは被害が大きく、素早い対応が難しいため、その 近くの亘理町(南部)と登米町(北部)に拠点を作りました。

災害以前からの困った状況

岩手では、ゆめ風基金のネットもなく、情報も少なかったのですが、「CILもりおか」の方々と協力しながら、1週間後には、事務所の開設にこぎ着けました。岩手で、短期に信頼関係を築けたのは、@障がい者団体への支援だけでなく、ヘルパー派遣や通院の送迎など個別支援に重点を置いて活動すること、A長期に渡る支援をきちんとやり切ることを表明したからです。出会った人たちから信頼を得ることで、情報が入ってくるようになり、連携した動きができました。

岩手県全体も社会福祉基盤が弱く、沿岸部ではヘルパーサービスなど訪問系のサービスが、ほとんどありません。被害が小さかった盛岡市ですら、障がい者が街で出歩く姿をほとんど見かけることがありません。災害による「困った」だけではなく、災害以前からの「困った」状況があります。

被災障がい者だけでなく、地域の元気な障がい者にも出会いを求めて、当事者を中心に新たな岩手県の福祉の町づくりをめざしたいと考えています。

被災地の救援組織の連絡先

現地情報・ボランティアの問い合わせは、下記に。
  • 被災地障害者センターみやぎ:CILたすけっと 電話:022-746-8012 FAX 022-248-6016
  • 被災地障害者センターふくしま 電話FAX:024-925-2428
  • 被災地障害者センターいわて 電話FAX:019-635-6226
  • 「ゆめ風基金」は、阪神大震災直後、被災した障がい者支援のために設立されました。寄付金約2億円が寄せられましたが、「こんなときのための蓄えだ」と全額を投入することを決めました。新たに全国から寄せられた約1億5000万円も全て使い切る予定です。引き続き寄付を募っています。 郵便振替 00980-7-40043 「ゆめ風基金」です。

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