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新聞の作り方 「君が代強制条例」の暴挙 石塚直人

教育の場における自由の束縛

全国でも例のない「君が代起立条例」が大阪府議会で可決された(6月3日)。橋下徹知事が代表を務める「大阪維新の会」が提案、他の主要会派を押し切ったもの。知事は、これに従わない教員を処分する新たな条例案を9月に出すとも表明した。数を頼んでの暴挙としか言いようがない。

「維新の会」は、「大阪都」構想を軸に行政の刷新を訴え、4月の地方選で躍進した。選挙中に日の丸・君が代問題はほとんど話題にならなかった。直接の当事者である府教委が条例の必要性を否定したこと、自民府議団までが慎重審議を求めて反対に回ったことからも、知事の独断ぶりが際立つ。

日の丸・君が代を巡っては、この連載でも何度か触れた。言論・報道の自由を含むあらゆる自由権の根幹を成す「思想・良心の自由」が未来の主権者を育てるべき教育の場でどう扱われているかを、最も象徴的に示す指標であるからだ。

条例の提案から可決までの間には、起立しなかったことを理由に処分された東京の元高校教諭の訴えを退けた最高裁判決(5月日)も出た。最高裁判決は、全体として「卒業式で教員に起立・斉唱を求めた校長の職務命令は憲法違反ではない」としつつ、4人の裁判官のうち3人が「強制や処分は抑制的であるべき」「国旗・国歌が強制的にではなく、自発的に敬愛される環境づくりが重要」などの補足意見をつけた。

批判的論評目立つ地方紙

新聞が社会的に賛否両論が大きく分かれるニュースを報道するとき、文末につける識者のコメントは賛否の両方を取るのが原則だ。これが「客観」報道であり、新聞社(記者)の主張は、これとは別に扱う。

しかし最高裁判決を巡っては、判決を肯定する立場の読売・産経が、原告の登場する部分以外は自社と同じ主張のコメントだけで記事を作った。いくら本音といえどもジャーナリズムとしては異例であり、一方的な世論誘導の恐れをはらんでいる。

起立条例については、産経が最も肯定的だ。読売は社説で「従わない教員がいる以上、やむを得ない」とする一方、社会面などの記事では強権発動に抑制を求めるようなニュアンスも目につく。朝日・毎日の扱いには、批判的な色合いが濃い。

問題が大阪だけにとどまらない以上、各地の地方紙も社説でこの条例について論じている。「乱暴な提案だと言わざるを得ない」(日、北海道)「大阪府には在日韓国・朝鮮人も多い。君が代を巡る歴史的経緯を踏まえ、そうした人たちの思いに配慮することも首長の責務」(同・信濃毎日)などで、肯定論は見当たらない。愛媛(日)は「国旗国歌を否定するなら公務員を辞めればいい」などという知事の粗雑な発言を「強圧的・感情的で、到底容認できるものではない」と切り捨てた。それが当然ではないか。

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