原発被災地の今 命を守るのは、国でも学者でもない 佐藤幸子
原発被災地=福島では、今も汚染が広がり続けています。福島の人々は、避難するか、留まるかの間で揺れ動き、家庭でも地域でも「安全を信じたい人々」と「不安を抱える人々」との葛藤が渦巻き、「家庭崩壊も起き始めている」と、佐藤幸子さん(福島県川俣町在住)は、語ります。「安全な所でのうのうと生活している人たちに、福島の安全を決められたくない。対策本部を半径30キロ以内に持ってきなさい」―こう政府に迫る佐藤さんに「子ども福島ネット」の活動をお聞きしました。(文責・編集部)
情報隠しで大量被曝した県民
地震直後、まずヘルパーを派遣している利用者さんの安否確認をし、深夜、自宅で子どもたちと遅い夕食を終えて、頭に浮かんだのが、「原発は大丈夫か?」という不安でした。すぐに山形で養鶏を営む友人に頼んで、子どもたちは数日のうちに避難させました。
しかし、ほとんどの福島県民は、停電でテレビからの情報も途絶え、高濃度放射能が降り注いでいるとは知らず、ガソリンや水を求めて、屋外で何時間も列に並んでいたのです。
水素爆発(12日)で事故の重大さが伝わると、県民の気持ちは一変しました。「直ちに健康被害はない」という政府見解を信じたい人々と、「大変なことが起こっている」と不安を持った人々との深い溝ができ、家庭でも地域でも険悪な空気が流れました。真っ先に避難した人を「自分たちを見捨てて逃げていった」と責める人も現れました。
驚くほどの高濃度汚染
3月下旬、介護事業所の安全確認のため、ガイガーカウンター(放射線測定器)を借りました。間もなく、子どもたちの健康被害を心配する保護者たちが、学校の汚染測定を始めたので、私も協力しました。学校の校庭、U字溝等を測ってみると、驚くほど高い放射線量でしたので、県教育委員会にデータを示し、新学期の延期と避難の促進を求めました。
県も測定を始め、その結果75%の学校が、18才未満立ち入り禁止である「放射線管理区域」に相当する汚染度であることがわかりました。
ところが政府は、4月19日、安全基準値として「年20ミリSV」を発表したのです。さらに、県が放射線健康リスク管理アドバイザーとして雇った広島大学の神谷研二教授は、子どもたちの屋外活動について聞かれ、「屋内退避指示地域以外は問題ない。外で遊ばせてよい」と発言します。これを聞いて私は「福島の子どもたちは殺されてしまう」と直感しました。子どもたちの命を守るのは、国でも学者でもないと思い、自主調査を始めました。
やっと繋がれた子ども福島ネット
「年間20ミリSV基準の撤回を求める」対文部科学省交渉(4月20日)は進展がなく、福島で「子どもたちを放射能から守る福島ネット」の準備を始めました。...続きは本紙ご購読をお願いします。
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