新聞の作り方81 脱原発の民意を新政権へ 石塚直人
政権交代が幻となる?
菅首相が衆院で、特例公債法案と再生可能エネルギー特別措置法案の成立後、速やかに退陣すると明言した(8月10日)。民自公3党の協議の進展に伴い、両法案はともに26日までに成立する見通しで、政局は一気に「ポスト菅」へと走り出した。28日頃には民主党代表選が行われ、月内に新政権が誕生する運びだ。
31日現在で代表選出馬の意思を明らかにしている各氏のうち、最有力とみられる野田財務相は、同日のテレビ番組で、自公両党との大連立を含む「救国内閣」構想をぶち上げた。野田氏は消費税増税論者で、原発についても「再稼働に向け努力する」が持論。彼が代表・首相となれば、市民運動家出身の菅氏が面目を保った唯一の功績とも言える「脱原発」も投げ捨てられる可能性が大きい。それでは民主党の「自公化」は名実ともに完成し、2年前の政権交代は幻だった、と言うに等しい。
世界中を震え上がらせ、今も被害を収拾できないままの福島第一原発事故を経て、日本人はようやく原発「安全神話」の呪縛から脱しつつある。朝日新聞の世論調査(8日)によれば、原発に依存しない社会を目指す姿勢を次の首相も「引き継いだ方がいい」と答えた人は68%に達した。この民意をさらに強め、施策に生かすよう新政権に促すことこそ、ジャーナリズムの本来の仕事でなければなるまい。
メディア自身の不十分な責任追及
朝日、毎日、東京の3紙は、7月半ばから8月上旬にかけて相次ぎ社説特集を組み、はっきりと「脱原発」を打ち出した。とくに東京(6日)では、豊田洋一・論説委員がメディアの責任に触れ、「結果として原発推進の翼賛体制の一角を担わされたことには、じくじたる思いがある」と自己批判に踏み込んだのが目立つ。
一方、事故直後はやや慎重な物言いを感じさせた読売は、菅氏の「脱原発宣言」あたりから再び露骨な原発推進論に舵を切った。11日付一面トップの緊急提言「新政権で復興急げ」では、「ストレステストなどで安全が確認できた原発は、政府が責任をもって再稼働させるべきだ」と断言した。「情緒的で耳当たりのいい『脱原発』『反増税』を唱えるだけでは日本は沈没する」「民主、自民両党を中核とする超党派の『救国内閣』的連携が求められる」の主張は、野田氏のそれとも重なり合う。...続きは本紙ご購読をお願いします。
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