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新聞の作り方84:声を上げなければ事態は前に進まない 石塚直人

米国の言いなり小泉改革と同じ構造

野田首相が記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する方針を正式に表明した(11月11日)。相前後して大阪府知事選・大阪市長選(同27日投票)が告示され、市長選は早くも橋下徹氏圧勝との声が聞こえている。暗澹たる思いだ。

前回連載でも少し触れたが、TPPで全国紙は揃って推進論を掲げた。農業分野から国民皆保険の動向まで、参加すればどうなるのか、具体的な見通しはほとんど明らかになっていないにもかかわらず、「とにかくバスに乗り遅れるな」と急かす論調が目立った。小泉政権時代の「改革なくして成長なし」の大合唱と同じ構造ではないか。

小泉改革がもたらしたのは、中産階級の解体と社会の劣化だった。貧困層が急増し、若者の半数は正規労働者への道を絶たれた。旗振り役の1人だった中谷巌・元一橋大教授が「あれは失敗だった」と反省する本を出したのは、まだ記憶に新しい。

米国に言われるまま日本を引っ張ったのが小泉改革だから、その結果として米国に瓜二つの酷薄な社会が現出したのは仕方のないことだろう。テレビや新聞(ここでは全国紙)がその二の舞でしかないTPPの旗振りをなぜ続けるのか、私にはよくわからない。編集局のトップ級や政治部・経済部の記者たちが財務省の情報攻勢にどっぷり浸かっているからだとする、たとえば週刊ポスト(10月7日号)の評論を読めば、そうかもしれない、とは思う。一方で、身内を責められるのはつらく、それに反論したい自分もいる。

老人会で、関電・大飯原発見学ストップ

話を大阪に移そう。「独裁」を自ら呼号する橋下氏の、黒を白と言いくるめる才能には脱帽せざるを得ない。ただ、彼が当選したとして、その後の4年間で大阪市がどうなるか。知事を「維新」の松井一郎氏でなく、対抗馬の倉田薫氏が射止めた場合でも、橋下氏が市長になれば、府政が彼に引きずられていくことは目に見えている。

それでも、元気の素になる話が皆無ではない。大阪府高槻市のある自治会内老人会に、自治会長(老人会長兼務)から関西電力・大飯原発へのバス旅行の話が持ち込まれたのはこの夏。自治会の有志が問題にし、臨時総会でいったんストップをかけたが、老人会の役員会は全員一致で実施を決めた。有志は自治会長に抗議するとともに、関電高槻出張所にも掛け合った。市役所内の記者室で午後4時から記者会見するという11月8日の昼になって、出張所から「計画中止」を知らされた。

関電は福島第一原発の事故後、原発への見学会を中止していたが、事故への対応が一段落した夏に再開していた。有志の質問に対し、自治会長の強い要請で計画を進めたと回答しており、反対論が強いと知ってあわてて撤回したようだ。「これはおかしい」と思えばとにかく声を上げる、そこからしか事態は前に進まない、と改めて教えられた。

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