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当事者リレーエッセイ:当事者を置き去りにする福祉サービス 佐野武和

滋賀の福祉甲賀にあり!?

滋賀県を7分割して「福祉圏域」としているが、特に甲賀福祉圏域は有名だ。レスパイトやサービス調整会議のあり方が注目され、国の制度のお手本であったり、全国各地からスーパーバイザーとして招かれたりと、「滋賀の福祉、甲賀にあり」との様相だった。

おいらの湖北圏域は、ぱっとしない3障がい合同の支援センターに人ばかり集まり、所長は天下り、中堅は教師からの横滑りなのだ。実務者とのギャップ、初心者マークの陣形ではいかにも、の感じ。いや障がい当事者とのおおきな溝は、埋まりそうにない。サービスを割り振る手配師のような相談支援が横行している。偏った地域の福祉資源は、いびつな報酬単価のせいだと断言し、福祉圏域のサービス調整がおこなわれる気配すらない。困った現実だ。

そんなおりも甲賀福祉圏域で課題が多く、本人が移住地として湖北圏域を選んだ事案で甲賀福祉圏域のケース会議にお邪魔する機会が発生した。昨年末からの事案で、年を越しアッという間に1月の中旬を過ぎる頃、痺れを切らしてのこちらからの申し入れをいったん断られた。

甲賀の会議に突撃ブチ切れ

その当事者は、おいらの現場で年末から働いており、忘年会にも参加、正月の餅代だって渡した。役所を通してその日、押しかけるがごとく甲賀の会議とやらに突撃した。聞きしに勝る丁寧さ、原則的、硬い、契約事項を淡々とこなす。見習わなくてはと謙虚さを自分に課したが失敗だった。ブチッと切れたらとまらない。

そもそも契約を交わすということは福祉になじまない。あえて約束をするとしても「あんたら僕をしっかり支援してくれなかったやんか。約束が違う」と当事者から抗議されることはまずない。一方的に約束違反は当事者に向けられる。

 「おい、甲賀の福祉職の人たち、充分な支援ができなかったと謝れ」と、まあ乱暴なこと言ってしまった。ありゃあまた言うてしまった。帰りに「失礼の段お許しください」と、反省の言葉を残し、湖北で引き受けるぞとの思いを胸に念じた。

彼は養護施設で育った。「いつも『絶対食事を残すな』と職員に指導された。体調が悪いのに油くさいエビフライを無理やり食べろといわれ、泣きながら食べたけど、それからエビフライが嫌いになった」―帰りの車の中で彼の話を聞いてなんだか胸が痛くなった。

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