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新聞の作り方87:新聞の衰弱を示すいくつかの兆候 石塚直人

維新の会 国政進出準備で拡大する影響力

橋下徹・大阪市長と彼の率いる「大阪維新の会」の、国政進出に向けた動きが加速してきた。橋下氏は次期衆院選で200議席を目指すと公言し、2月13日には会合で衆院選公約の骨子を説明。自派候補を絞り込むため3月24日から開講する「政治塾」には、定員の10倍近い3326人が応募した。

各紙の世論調査では、野田内閣の支持率は20%台前後で低迷したまま。民主、自民両党がともに不人気をかこつ中、橋下氏は「望ましい政治リーダー」のランクでトップの座を占める。朝日(2月14日)によれば、「維新」に国会で影響力を持つだけの議席を取ってほしいという意見は54%に達した。

主な公約を見る限り、日米同盟堅持やTPP参加などは現政権と同じで、教育・職員基本条例案の法制化など「独裁」を称揚する姿勢に変化はない。堺屋太一氏ら、特別顧問などの形で橋下氏をバックアップする文化人や元官僚の人脈も、時を追って拡大している。

矢継ぎ早にことを運ぶ橋下氏の手法は、周囲への目くらましの意味もあるのだろう。新聞報道だけを見ても、進行中の事実を追いかけるだけで精一杯で、その結果地域社会がどうなったのか、の検証までは手が回らない印象だ。

橋下氏をきちんと批判するための視座

論争で相手を黙らせれば勝ち、と信じているらしい橋下氏をきちんと批判していくのは簡単ではない。よほど強靭な民主主義の思想と感性を持たない限り、流されてしまう。その点で今のメディアは心もとない。大手各紙が消費税増税とTPP参加で筆を揃え、原発推進を公言する社も少なくないからだ。

例えば共産党が国会で質問するように「280兆円に上る大企業の内部留保の一部を吐き出させ、富裕層のための証券優遇税制を廃止する」だけでもかなりの財源ができる。そのことに各紙が一切触れないのはなぜか、私にはさっぱりわからない。「建前はともかく、彼らは大企業と財界の仲間なんだ」と非難されても仕方がない気がする。週刊朝日やサンデー毎日が本紙と違って増税批判を展開しているのは、言論の多様性という観点から評価できるが、それも決して十分ではない。

紙面に登場する学者・知識人も、大企業と利潤が第一という現行の社会システムに根本的な変革を迫るタイプの人はほとんどいない。これは言論機関としての新聞の衰弱を示す。

私は最近、学生時代に大きな衝撃を受けた新約聖書学者・田川建三さんの著作を30数年ぶりに読み返し、その思想の骨太さと射程の広さに改めて感銘を受けた。学生の正当な要求を守って大学を解雇され、ドイツとアフリカで教えた後、今は新約聖書の原典からの全訳に取り組む碩学の歩みを、拙文の読者の皆さんにも彼のHPで知ってほしいと思う。(http://www6.ocn.ne.jp/~tagawakn/)

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