当事者リレーエッセイ:恐怖を感じながらの外出 三原ひろみ
白杖につまづく通行人
私は、ほぼ毎日のように電車を利用して外出をしている。私は、弱視で視野が狭く、視力だけを頼りに歩くのは危険なため、白杖を使っている。
毎日「人や柱などにぶつからないかな?」「階段やホームから落ちないかな?」「電車にちゃんと乗れるかな?」など、不安な気持ちでどきどきしながら移動をしている。そんな中、目的を果たして何ごともなく無事に帰って来た時には、ほっとする。
車の運転などと同じで、自分で気をつけて防げることと、自分が気をつけてもどうしようも防げないことがある。私が大阪に住むようになってから14年になるが、周りの人は、かなりせかせかと歩いているような気がする。そのためか、私の白杖に気づかず、何人も白杖に引っかかって、思いきり転んでいる。初めてこの体験をしたのが、JR鶴橋駅で、ホームを歩いている時に、電車に急いで乗ろうとした人がつまずいて転んでいた。かなり衝撃があっただろうにその人は、目の前の電車に乗って行った。次の大きな体験は、朝のJR大阪駅だった。私は改札に向かって歩いていたが、横から男性が来てぶつかり、転んだと同時に杖が折れた。私は、通勤途中でとても不安になった。3度目の大きな出来事は、2日前にあった。私は、地下鉄を乗り換えるため階段を降りようと、最初の段を杖で確認していた。すると前から人が上がって来て、杖に引っかかり、その杖から逃れようとした次の瞬間、相手が飛んだかと思ったら、階段の踊り場に着地していた。この時ばかりは、私もひやっとした。人が多い時間だったので、その後、その人がどうなったかは分からないが、何とも言い表せない気持ちで、家まで帰った。
気遣いができる余裕を
これ以外にも細かいことはいろいろあるが、私が最も心配するのは、これが相手が高齢者や子どもで、取り返しのつかない怪我になったらどうしよう?ということだ。どちらが悪いというものでもないだろうし、裁判になるのかな?と考え込んでしまう。
私達も人の多い所では、杖の使い方に細心の注意を払いながら歩かないといけないとは思うが、健常者も、もう少し前を見て歩いてもらいたいと思う。
今は、携帯の操作をしながら歩いている人がいたり、よそ見をして歩いている人も少なくない。お互いが、少しずつでも気遣いをすれば、今よりはもう少し恐怖を感じずに、外出できると思う。
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