新聞の作り方89:強権的な橋下市長が大飯原発再稼働では「民主的」? 石塚直人
近畿の自治体首長は「原発再稼働」を批判
野田政権の暴走?迷走?が止まらない。消費税引き上げ法案の国会提出(3月30日)と、これに続く関西電力大飯原発(福井県)再稼働への動きを挙げれば十分だろう。
社会保障制度との「一体改革」をうたいながら、最低保障年金(月額7万円)の創設を目指す法案は来年の(!)通常国会に後回し。弱者のための所得再配分という政治の本旨を忘れ、税金を取れるところから取る、というのが前者なら、企業利益のために福島第一原発事故の教訓を投げ捨てるのが後者と言っていい。
裏付けとなるデータが不十分なまま「再稼動させないと夏場の電力需要を賄えない」と電力会社や財界が主張するのは、ある意味で当然のこと。それが本当に事実かどうかを確かめ、さまざまの政策や調整によって新しい可能性を作り出していくことこそが政治だ。財界の操り人形として動くだけなら、政治家はいらない。
この問題で、万一の場合に大きな被害の予想される近畿の自治体首長が、こぞって政府に批判的な立場を取っているのは、「脱原発」が主流を占める有権者の意向の反映でもある。中でも、教育基本条例などで強権的な姿勢を貫く大阪市の橋下徹市長が、この分野で珍しく「民主的」であるのが興味深い。
作家・赤川次郎氏の「橋本批判」
大阪市は関西電力の筆頭株主であり、大阪府とともに提示した「再稼動に関する8条件」は、原発近隣府県との安全協定締結や使用済み核燃料の処理体制確立など、住民の安全確保の視点からは当然と言うべき項目が並ぶ。朝日は13日朝刊社説で「その思いには強く共感する」「地方からの変革を重んじる橋下市長には、先頭に立って住民や企業に理解を求め、創意工夫に満ちた対策を繰り出してもらいたい」と過大な(?)期待を込めた。
橋下氏はこの日のツイッターで「了解。読売や産経には原発再稼動で攻められているのでこれは大変心強い」「弱音を吐いても仕方がない。松井知事とまさに府市統合でやれるところまでやってみる」などと応じている。
12日の同紙東京本社版「声」欄では、「三毛猫ホームズ」シリーズで知られる作家・赤川次郎氏の「橋下批判」が注目された。同日の「J─CASTニュース」によれば、大阪府立高校の卒業式や文楽協会への補助金削減に触れ、「生徒のものであるはずの卒業式で、管理職が教師の口元を監視する。何と醜悪な光景だろう!」「客の数だけを比べるのはベートーヴェンとAKB48を同列にするのと同じ」と論じた。
17日現在で大阪本社版には載っていないが、真っ当で小気味いい指摘だ。ただ、これとは別に、橋下氏の「脱原発」は彼の政治家としての本領を示す。朝日では、13日朝刊「耕論」の反貧困ネットワーク事務局長、湯浅誠氏へのインタビュー(民主党政権論など)も面白く読んだ。
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