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吹田の生き物と人50:ヤゴ救出大作戦 高畠耕一郎

感動的な羽化の瞬間

私は20年程前から学校にビオトープのトンボ池を作ったり、春にプールにいるヤゴを救出し、トンボになるまで育てています。

都会でも、秋には体育の授業で使用しなくなったプールにトンボがやってきて、産卵し、たくさんのヤゴになります。イトミミズなどの虫を食べて、大きくなり梅雨明けにはトンボになって飛び立っていきます。

しかし、中学校に水泳部があったり、小学校でも水泳に熱心な学校では、6月に入るとプールを使うために、水を抜き清掃を始める学校もあります。プールにいた何百何千匹というヤゴが、全滅してしまうのです。

そこで、私たち吹田の学校関係者の環境教育研究会では、「手引書 ヤゴの引っ越し作戦」という冊子を作成し、ヤゴ救出とトンボにまで育てる取り組みへの協力を呼びかけました。また、NPO法人・すいた市民環境会議からも「学校プールのヤゴ救出要請文」を吹田市教育委員会に届けています。その結果、多くの学校で、プール清掃前に、児童・生徒によってヤゴの引っ越しが行われるようになりました。

子どもたちは、初めは水中にいるヤゴを恐がって、おそるおそる触っていましたが、その内に競ってヤゴを網で救い出していました。

ヤゴは、教室などでペットボトルに入れて飼われますが、翌日には、立てていた割り箸や木の枝を登り、トンボになるものもいて、子どもたちを驚かせています。羽化の場面は感動的で、子どもたちも「頑張れ! 頑張れ!」と声援を送る場面もありました。『命の大切さ』を実感し、学ぶ場にもなっています。トンボになると、野外に逃がしてやります。

プールで育つヤゴ

トンボの幼虫がヤゴであることは、日本人ならほとんどの人が知っていますが、外国では逆にほとんど知られていなくて、ヤゴという単語は、ヨーロッパでは昆虫の専門家しか知らないようです。

日本書紀によると、神武天皇が大和国の腋上の地を訪れて国見をしたとき、「この国は、蜻蛉が、つがったような形をしている」といわれたことから、日本を「秋津洲」というようになったといいます。「あきつ」とはトンボの古語です。

赤トンボは、夏の暑さが苦手なので高い山に移動して避暑をしますが、秋近くになると平地に降りてきて、ため池や使用されなくなった学校プールなどに卵を産みつけます。そして卵のままで冬を過ごし、春になると小さなヤゴになります。プールのヤゴも、落ち葉の下に隠れながら、自然に沸いたイトミミズやボウフラなどを食べて、少しずつ大きくなっていくのです。

「ヤゴの引っ越し作戦」が行われるようになって、多くのヤゴが救い出され、赤トンボになって飛んでいくのです。

連載終了にあたって

多様な生物と一緒に暮らせる吹田を守りたい

2008年1月、まねき猫通信編集長の上田さんから「地元の生き物や自然に関する原稿を書いてもらえないか」と依頼されました。私は、小学校の時から作文が苦手で、専門的に生物や自然のことを勉強したわけでもありませんので、一旦は断りました。でも、「数回でもいいから」と再びお願いされ、自然観察会でやっていたタンポポの分布やセミの抜け殻調査の報告なら書けるかもと思い、引き受けてしまいました。

でも連載が始まると、あれも書きたい、これも書いた方がいいなと、日常生活で身近な植物・野鳥・昆虫のことを次々と書き続け、いつの間にか回になりました。

さすがに、ネタが底をつきはじめたので、今回で終わることにします。取り上げた生き物を分類すると、樹木16、野草10、昆虫9、ほ乳類3、ハ虫類2、両生類1、魚類2、菌類1、鳥類6となりました。

「吹田市内に野生の生き物なんているの?」と、よく言われます。でも、ちょっと気をつけて自然を見渡せば、色んな生き物が環境に適応し、互いに関係しながら、必死に生きている姿が見えてきます。それが自然を観察することだと、私自身が再認識させられています。

これからも、もっと吹田の生き物をウオッチングしながら、人間だけでなく、多様な生き物たちと一緒に暮らせる吹田の自然環境を守っていきたいと思っています。ありがとうございました。(高畠 耕一郎)

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