ぷくぷくの会ホームページ

新聞の作り方92:10万人のデモを無視し続けたマスメディア 石塚直人

マスメディアがネットに完敗した日

集英社「週刊プレイボーイ」編集長などを務めた鈴木耕さん(現在フリー)は、ブログ「時々お散歩日記」(7月4日、「マガジン9」所収)に、6月29日を「マスメディアがネットに完敗した日本報道史上初めての日」と書いた。

4月から毎週金曜日に首相官邸前で行われてきた大飯原発再稼働反対デモを無視し続け、数万人が集まった6月22日も一部を除き動かなかったマスメディアが、この日一転して報道したからだ。この間、ネット上ではメディアへの批判が渦巻き、評論家の広瀬隆さんは「我々が彼らに代わってヘリコプターを飛ばし、撮影した映像を全国に配信する」と予告していた。

29日には広瀬さんらの分も含め、5機のヘリがデモ隊を空撮したといい、記事は「大小の違いはあれ、報道せざるを得なくなった」と記す。原発推進の読売でさえ、第2社会面に小さな記事を入れた。それがネットの功績か否かはともかく、10万を超える人たちが「再稼働反対」で官邸前に集結した重みを無視することがメディアの本旨でないことだけは、間違いない。

7月7日の読売朝刊(大阪本社)では写真も入れていた。社論はともかく、テレビも含め他社がすべて扱うのならしかたがない、ということか。同業他社、とくにNHKの動向が気になるのはどこも同じと見える。

散見される注目記事

7月7日朝刊は、他にもニュースが多かった。大阪本社版では大津市の中学生自殺事件を巡り報道合戦が続いているほか(この問題で、学校や市教委の対応はひどすぎる。徹底的に究明してほしい)、福知山線脱線事故で強制起訴されたJR西日本元社長3人の初公判、「大阪都」法案の与野党合意など。

大阪過労死問題連絡会会長の森岡孝二・関西大教授のブログに「冷酷非情な歳定年制を提言しました」とあるのを見て、あわてて調べた政府の「国家戦略会議」フロンティア分科会報告もこの日の記事。朝日、読売などが集団的自衛権問題を見出しに取り、政治面に入れたのに対し、日経はこれに絞って3面で紹介した。経済紙ならではの着眼ながら、報告内容を一切批判せず垂れ流しているのにはげんなりさせられた。

ついでに触れると、ダイヤモンド社のウェブ版「ダイヤモンド・オンライン」7月5日号。消費税増税をほぼ手中にした財務省の幹部が「今後の逆風を懸念している」との指摘を興味深く読んだ。

去年まで朝日新聞編集委員だった山田厚史さんの「世界かわら版」で、財務省の何たるかがよくわかる。これを現役記者が書けないあたりが今の朝日、あるいは新聞の限界なのかもしれない。

WEBは抜粋版です。すべて読みたい方は購読案内をご覧ください。



1999 pukupuku corp. All rights reserved.