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新聞の作り方94:この国の空虚な政治 石塚直人

橋下維新の危うい船出

大阪維新の会が大阪市内で政治資金パーティーを開き、代表の橋下市長が国政政党「日本維新の会」の結党を宣言した(9月12日)。21日には民主党代表選、26日には自民党総裁選が行われる。

民主党代表選は、7日に細野豪志環境大臣が不出馬を表明し、野田首相の再選は動かない。自民党総裁選は14日に5人の争いが確定したが、どの候補も決め手を欠き、上位2人による決選投票が確実視されている。2つの選挙はともに盛り上がらず、各メディアの報道も「維新」がどこまで勢力を伸ばすかが最重点のようだ。

13日の朝刊は、阪神・ 金本知憲外野手の引退表明やリビアでの米大使殺害も重なり、全国紙(大阪最終版)の一面はこれらの生ニュースであふれた。社会面も「金本」と並んで「維新」が軸となったが、社によって印象ががらり違うものになった。

最も目を引いたのが産経。「橋下氏のあいさつが終わった途端に多くの人が波を打って退席」と前文に入れ、本文でも「会場は新党の船出にふさわしい熱気に包まれたが、橋下氏が出ていくとたちまち冷めた」「エスカレーター前は押し合い状態」など、橋下氏ひとりの人気に頼る現状を酷評した。毎日、読売は参加者の声を集め「高揚感と不安」。朝日は主催者のあいさつを軸にした定型的な記事で、それぞれ維新に好意的、批判的な2人の識者の長いコメントをつけた。

産経新聞のジレンマ

産経の異例の「踏み込み」は、単に現場の記者が退場者の多いのに驚いて書き加えた、というレベルのものではない。この種の記事は、編集局のトップが政治的判断を交え、「こうする」と決めなければ、社会面のトップにはならないのだ。なぜこういう記事になったのか。

大阪府・市の職員や労働組合を叩くことでのし上がった橋下氏は、8月に竹島問題に絡んで従軍慰安婦問題に触れ、「河野談話」の見直しを主張した。教員への日の丸・君が代強制を徹底させ、右翼団体の主張を容れてリバティおおさか(大阪人権博物館)の改組を打ち出すなど、国家主義的な傾向が強い。産経が最も好む自民党総裁選候補・安倍元首相とも近く、本来ならこれほど酷評することは考えにくい。

橋下氏への好意は別にして、「維新」そのものが橋下人気にあやかって権力にありつこうとする低レベルの連中の集合体であることを産経も認めざるを得ず、秩序や格式を重んじる立場から苛立ちを隠せずにいる、とでも解釈するほかないような気がする。それにしても、党内秩序を全く失った民主・自民、その間隙を縫って急速に膨張してきた「維新」の空虚さ。この国に本来の社会民主主義政党がどうして大きく育たないのか、も不思議で仕方がない。

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