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特集:いす使用者への「乗車拒否」をやめて!
10/10=アクセス行動の日 アクセス関西ネットワーク設立

交通バリアフリー法施行(2000年)から10年以上経ちながら、公然と車いすの乗車拒否を続けるバス会社があります。滋賀県南部で路線バスを運行する帝産湖南交通です。

2011年7月、車いす利用者のAさんが石山駅でバスから降りる際、乗務員が後ろから車いすを支えていなかったため転倒。Aさんは、その後数回にわたって乗車を求めましたが、バス会社は「安全を確保できないため、乗車お断り」との対応をとり続けています。この問題にいち早く取り組んでいる「帝産湖南交通に取り組むネットワーク」の小泉浩子さん(JCIL京都)に話を聞きました。

バリアフリー新法は、バス事業者に対し車いす使用者への接遇研修を十分に行い、すべてのバス停で快く乗り降りできるよう努力を求めています。「こうした時代の流れに完全に逆行している帝産湖南交通の対応は、車いす使用者への差別で、決して許せません」―小泉さんは怒りを隠しません。

10月10日には、アクセス関西ネットワークが設立され、今後交通バリアフリーへの取り組みも強化されます。設立集会の模様も含めて、報告します。(文責・編集部)

Aさんは、京都在住のJCIL居宅介護の利用者で、定期的に石山駅から上稲津駅の区間で帝産湖南交通バスを利用していましたが、昨年9月以降、乗車拒否が続いています。Aさんから連絡を受けた小泉さんは、9月日、帝産湖南交通本社(草津市)に行き、事実確認と再発防止を申し入れましたが、対応した部長は、運転手の不手際を認めないばかりか、「安全の確保ができない」としてAさんの乗車を拒否したのです。9月16日と19日に数名のメンバーが現地調査をしようとした際も、乗車拒否されています。

その後の調査で、帝産湖南交通は低床バスを運行する157のバス停のうち、29しか車いすの乗降を認めておらず、内部規定を作成して、ほとんどの路線で始発と終点でしか乗降させないと決めていたのです。

2006年にはバリアフリー新法が施行され、全国で運行する乗り合いバスのうち約7割が低床バスとなり、障がい者の社会参加が推進されつつあります。滋賀県内を運行するほかのバス会社3社は、車いす使用者の乗車を認めており、帝産湖南交通の対応は特異なものであることもわかりました。

近畿運輸局への働きかけ

小泉さんたちは、9月20日、バス運行の許認可権をもち、運行指導を行う国土交通省近畿運輸局に要望書を提出しました。内容は、@障がい者の「社会参加」を奪う「乗車拒否」を止めさせる、A再発防止のために社員への接遇教育研修を徹底させる、Bノンステップバスを増やし、低床バスのダイヤを固定する、C9月中にバス会社への指導を行い、AさんとJCILに経過報告を行うことなどです。

乗車拒否撤回の闘いには、多くの障がい者が参加しています。DPIバリアフリー障がい当事者リーダーの山名勝さんを中心に、長浜のCILだんないのメンバーも参加しています。

昨年11月4〜5日に行われたバリアフリー当事者リーダー養成研修(会場・堺市)で、帝産湖南交通本社への要望書提出行動の参加者を募ったところ、20名以上が参加してくれることになりました。

帝産湖南交通への抗議行動

帝産湖南交通本社への要望書提出行動(11月9日)では、草津駅・石山駅での宣伝活動と石山駅からのバス乗車行動も行なわれました。ところが石山駅で車いす参加者が行き先を告げたところ、またもや乗車拒否。粘り強く交渉を続けると、担当の課長が出てきて内部規定を示しながら、「会社の方針としてやっている」と明言しました。その時の乗務員の発言から、帝産湖南交通の車いす乗降研修は、車いすを用いていないことも明らかになりました。

帝産湖南交通本社で行われた要望書提出行動には、支援者を含めて30名以上が参加し、熱気に包まれました。マスコミも来ていましたが、会社は交渉の場に入ることを拒否しました。

会社側は、弁護士を含めて3名が席につき、話合いは約30分行われましたが、Aさんの転倒の事実を認めず、車いす使用者のバス利用の予約制を提案するなど、乗車拒否の撤回を求める小泉さんたちにとって到底受け入れることができないものでした。要望書提出の模様はマスコミのカメラやビデオに納められ、報道されました。

合同バス停調査

こうした抗議行動の成果として今年の1月日、近畿運輸局は、帝産湖南交通の社長・部長を呼び出し「警告書・改善指導書」を手渡しました。内容は、@乗客への公平で懇切な対応を定める道路運送法の「旅客運輸規則」違反、A3カ月以内に改善報告書の提出を求めるもので、マスコミ各社もこれを取り上げ、社会問題化しました。

1月18日には、近畿運輸局に出向き、警告書の内容について、法律解釈などいくつかの質問をし、「乗車拒否をやめさせる為には、バリアフリー新法の趣旨に基づいた乗務員の接遇向上が必要である」と訴えました。

3月19日、帝産湖南交通、近畿運輸局、滋賀県、大津市、滋賀県バス協会が参加して合同バス停調査が行われました。しかし調査では、歩道の白線を踏み越えてバスを停車させるなど帝産湖南交通は「車いすが乗降できないことをわからせたい」という姿勢で、今もバリアフリー新法の趣旨を全く理解していないことが露呈しています。

車いす使用者が帝産のワンステップバスにスロープで乗り降りしてみて、「不可」とされるバス停の3分の2は、実際は可能だとわかりました。停車位置を少しずらすなどで利用できる所が多くありました。

不十分な改善報告書

帝産湖南交通は、4月11日「改善報告書」を近畿運輸局に提出しました。内容は、@乗降可能なバス停を29から76に増やした、A乗務員・職員の車いす研修の実施など。76ヶ所は約半分で、全体の改善計画はなく、到底納得できるものではありませんでした。

数十年にわたる障がい者の粘り強い闘いによって、交通バリアは少しずつ取り除かれてきました。駅のエレベータの設置や低床バスの導入が進み、バリアフリー新法など、法整備も進められてきました。しかし、今回のような乗車拒否は各地で報告されています。

「乗車拒否は事業者の接遇に問題があります」と小泉さんは語ります。「当事者参加の研修で接遇を改善し、バスを利用しやすい環境を整備すること。車いす使用者も積極的にバスを利用していくこと。今回のこのような問題を起こさないためにはこうしたことが必要だと思います」(小泉さん)。闘いは続きます。

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