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新聞の作り方97:自民圧勝導いたマスメディア 石塚直人

タカ派が牛耳る自民党政権への危惧

衆院選は自民が単独過半数(241)を大きく上回る294議席を取り、連立を見込む公明と合わせて全議席の3分の2を確保した(12月16日)。民主は議席を4分の1に減らし、「第3極」は維新が一定健闘した以外は低迷。護憲を掲げる共産、社民は退潮に歯止めがかからなかった。

17日の全国紙朝刊(大阪本社版)は、比例代表の一部が確定しない段階で締め切りとなり、各党の最終議席の報道は夕刊に持ち越した。社説や幹部記者の署名記事では、民主の「裏切り」への怒りを改めて指摘する一方、「大勝は敵失によるもの。慢心せず丁寧な政権運営を」と自民を戒めるトーンが目立った。

いかにも政治部らしい分析であり、それなりに正しい。ただ、あえて言わせてもらえば、この結果はマスメディアの報道の所産でもある。官邸前を埋め尽くした脱原発のデモを黙殺し、消費税率を上げるよう野田政権をあおり立て…といった紙面ばかり読まされてきた有権者が、先の見えない不透明感の中で「寄らば大樹」とばかり消去法で自民を選ぶのは、仕方のないことだ。これまで何十回と投票用紙に自民候補の名前を書いてきた人が多数派なのだし、選挙直前の北朝鮮「ミサイル」発射も、偏狭なナショナリズムの拡大につながった。

タカ派の牛耳る自民が唯一の巨大政党となり、民主、維新はすり寄る可能性が高い。安倍政権は憲法の「改正」に乗り出し、民衆の生活はさらに危機に瀕するだろう。国会外でよほど運動を盛り上げない限り、それを阻むのは難しい。

「金持ち優遇税制の見直し」という選択肢

今回の選挙を巡り、私が一番驚いたのは、「未来」の不人気ぶりだった。自民、民主、維新がいずれも右傾化を強める中、反原発と反増税を掲げる小政党の一本化を歓迎したのは日刊ゲンダイだけで、世論調査の支持率は上がらずじまい。小沢一郎・元民主党代表の影ばかりが強調された。

小沢氏がメディアに嫌われるのは彼の性格にもよるが、対米従属関係の見直しに踏み込む姿勢が日米支配層を怒らせたから、という指摘は一理ある。「選挙目当ての野合」という有権者の批判は、維新より未来に集中した。「脱原発」も、野田政権までが提唱したことでイメージが拡散され、争点としては埋没した。ふだんは博識と名文で読ませる読売「編集手帳」も、17日は嘉田由紀子代表をこき下ろしていた。

共産が主張する「金持ち優遇税制を見直し、大企業の内部留保260兆円の一部を吐き出させるだけで、大きな財源ができる」をメディアが一貫して無視しているのも、私には理解できない。そうした選択肢が、消費税を巡る解説記事でこれまで全く触れられてこなかったのは異常だ。もし理不尽な要求ということなら、批判・反論すればいいのに。

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