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新聞の作り方100:秘密主義のTPP追従するメディア 石塚直人

カラ約束?を信じる虚しい評論

安倍首相が記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加を表明した(3月15日)。翌朝の全国紙は、紙面の多くを割いて首相が決断に至るまでの過程や交渉の今後を論じ、経済界や農家、諸外国などの反応を紹介した。

ただ、記事の量の割に、どこか軽い印象がぬぐえない。「農業分野でのマイナスは最小限に」「国民皆保険制度は守る」と政府が約束している以上、それを信用するしかない、との結論が透けて見えるからだ。

朝日の編集委員だった山田厚史さんの「世界かわら版」(ダイヤモンド・オンライン、3月14日)は、民主党政権時代に日米事前協議を担当した前原誠司氏が11日の国会で「米国の要求があまりに不公平だった」と協議内容の一部を暴露したが、首相は守秘義務を理由にまともな答弁をせず、全国紙各紙も無視したことに触れ、「TPPの最大の問題点は農業でも関税でもない。自国民にも内容が知らされない秘密主義だ」と述べている。

TPPは、米国との関係改善を狙いに菅政権が突然持ち出した。協定が結ばれると、環境規制を含む産業経済関連法制は米国仕様への変更を迫られる。交渉でも後発国には対等な発言権がなく、すでに確定した項目への修正提案はできないため、安倍政権が冒頭の約束を守れる可能性は、極めて低いと見るべきだろう。

「決断の真価が問われるのはこれから」などと政府の覚悟を促す議論も目立つが、たとえば沖縄でのオスプレイ配備や原発再稼動問題を見れば、協定締結後のこの国の惨状は見当がつく。弱者を切り捨てる政権の本質を見ない評論は空しい。

PM2・5の発生原因中国に押しつけか

長く中国帰国者の支援に携わり、3年前から江西財経大学の日本語学科で教えている田中弘美さんのブログ「毎日がちょっとぼうけん」は、中国の地方都市を舞台に、学生たちとの温かな触れ合いをつづって読ませる。3月4日「PM2・5発生源は中国だけじゃない!」は、北陸中日新聞からの引用として「中国から飛来して大騒ぎになっている微小粒子状物質PM2・5だが、東京など都市部では以前から環境基準を超えていた」とあり、驚かされた。

記事は多方面からの取材をもとに、日本でPM2・5対策がほとんど手つかずの実態を明らかにし、東京大気汚染訴訟の関係者による「国は中国ばかりに原因があると見せかけている」との抗議も伝えている。荒井六貴さんという記者の名前で検索すると、彼が東京新聞特報部の記者であり、同部の記事を転載した「東京新聞『こちら特報部』のスマートフォン対応を願うブログ」があることがわかった。

同紙を講読できない首都圏以外の人のために、と誰かが開設したようだ。この記事は2月23日にアップされているが、他の記事も面白い。ジャーナリズムとはこうあるべき、とのお手本とも言える。

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