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新聞の作り方103:橋下「誤報」の濡れ衣に各紙の反発 石塚直人

問題だらけの橋本発言

「維新」の共同代表の1人である橋下徹・大阪市長が、「戦時下では慰安婦制度が必要だった」と述べ(5月13日)、大きな批判を引き起こしてから1か月になる。昨年末の衆院選で野党第2党に躍進した維新は、支持率が急降下し、見る影もない。

橋下氏はこのとき「沖縄に駐留する米海兵隊の司令官に風俗業の活用を進言した」とも語っている。国内に加えて米国国務省からも厳しく反発されると、「マスメディアの誤報」と居直り、必死で反論を試みたが、世論はもうだまされなかった。

従軍慰安婦を巡る「河野談話」見直しを公言していた安倍首相が、米国の反応を見て前言を翻し、ついでに国内で反発の強い憲法96条改正論議もトーンダウンさせているのは、さすがに前回の失敗に学んだ成果と思わせる。株価の乱高下などでアベノミクスの化けの皮もはがれかけているだけに、彼らも必死なのだろう。

維新の退潮で、7月の参院選では自民が圧勝するとの見方が強い。ただ、仮に自民の議席の一部を維新が取ったところで、「戦争のできる国」を目指す安倍政権への歯止めにならないことは、橋下氏が職員組合や「君が代」斉唱拒否の先生たちに敵意をむき出しにしてきたこと、維新内部から橋下発言への賛同が相次いだことで明らかだ。共産、社民、みどりといった護憲政党と、民主党内にのまともな勢力を伸ばすしかない。

興味深く読んだ投稿面

橋下発言で、新聞は積極的な役割を果たした。「誤報」と濡れ衣を着せられたことへの反発もあり、各紙とも社会面で橋下氏の人権感覚のなさを繰り返し指摘した。米国からの批判がなくても、自前の人権感覚だけでこれだけ書けたか、となると疑問もあるが、それでも社説で河野談話見直しを主張する社までが筆を揃えたのは、当然とはいえ評価できる。

中でも興味深く読んだのは、6月5日の朝日朝刊投稿面。従軍慰安婦問題に絡んで49歳女性の「慰安婦と接触した元兵士の生の声を聞きたい」、96歳男性の「自分の部隊は降伏前夜にすべての書類を焼却した。どこも同じだったはずで、資料が見つからないと言い張ることに何の意味があるのか」を並べて掲載した。

同じ面には、東京や大阪で「朝鮮人をたたき出せ」と叫ぶ集団に心を痛める在日コリアン2世、生活保護を受けて育った母子家庭出身女性の投稿も掲載されている。それぞれ、政治家と名のつく人たちが傾聴するべき発言だ。最近軟弱になったとされる同社だが、どっこい負けてなるものか、と気を吐く記者も健在であることがよくわかる。

戦場の兵士に慰安婦は不可欠という橋下氏の主張とは裏腹に、故郷の恋人を想うなどして慰安婦と接触しなかった兵士がいたことも、この兵士が隊内で「浮いた」だろうこととともに知っておきたい。サンデー毎日(6月16日号)のコラムで、佐高信さんが論じている。

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