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特集:ぎゃくたいは ぜったいに ゆるさないぞ
誰もが悲しい思いをしない社会-虐待のない社会へ リブロ虐待事件(福岡県)から考える

11月2日と3日、「世界とつながろう、被災地とつながろう、なかまどうし助けあおう!」 をテーマとした「第回 ピープルファースト大会大阪」が、クレオ大阪中央を主な会場にして行われました。

全体会の他にの分科会が行われましたが、全体会の1つめのテーマとして、「リブロ虐待事件」の報告がありました。NPO法人「リブロ」は、福岡県と佐賀県で知的障がいのある人が通う施設やグループホームを、いくつも運営しています。虐待は2年間も続いており、何人かの職員は理事長に直接、虐待を止めさせるように忠告しましたが、理事長は、息子でもある虐待をした職員の言い逃れを受け入れ、調査もせずに放っておいたのです。

2011年6月に、「障がい者虐待防止法」が成立しました。この法律では、虐待を発見した人は、市町村に通報しなければなりませんし、通報を受けた市町村は、虐待かどうか?を調べ、改善を指導したうえで、実態をみんなに知らせることになっています。

さらに、すべての自治体に「虐待防止センター」や「権利擁護センター」を設置することになっていて、通報もたくさんあるのですが、虐待事件は続いています。福岡県では、2004年にも「カリタスの家」で虐待が続いていたことがわかり、施設長と職員が逮捕されています。どうしてこんな虐待事件が、続くのでしょうか? 誰もが普通に暮らせる社会、誰も悲しい思いをしない社会は、どうしたら作ることができるのでしょうか? 考えたいと思います。(編集部)

千枚通しを投げる虐待

福岡県にある「ひまわり」という施設の職員が、当事者にひどい虐待をしていたことがわかりました。どんなことをしたかというと、先のとがった「千枚通し」を 当事者に向かってダーツのように投げて遊んだり、殴ったり、けったり、エアガンで当事者をうったり、足に障がいがある人の足をけったり、「呪」と書いたマスクを当事者にはめさせて、施設の中を歩かせたり、生きたザリガニを顔に近づけたり、女性利用者の体をさわったりしました。

職員の名前は、「坂本静治」といいます。坂本は「ひまわり」の支援次長で、職員を監督すべき現場責任者だったのですから驚きです。虐待は、2010年ごろから、2年間も続いていました。坂本は、警察に逮捕されても「やっていない」としらをきりましたが、裁判で有罪となりました。

この事件を知ったピープルファーストジャパンは、「虐待は許せない」 「またか。腹立つわ」と、厚生労働大臣、福岡県知事、福岡地方検察庁、リブロ理事長に抗議と要求書を送りました。要求の内容は、@虐待のことをちゃんと調べて、坂本に厳しい罰を与えなさい!、A調査して、わかったことを公表しなさい! 虐待に関係した人を公表しなさい! 二度と虐待が起こらないようにしなさい!、Bひまわりの理事長は謝罪しなさい! 法人を解散しなさい!、C厚生労働省は、この事件を全国に公表しなさい! 同じような事件がないか、調査しなさい! 虐待が起こらない方法を考えなさい!、Dこのことについて ちゃんと返事をしなさい! という内容です。

3月日には、約人で抗議行動も行いました。午前中、「ひまわり」を運営している「リブロ」に行きましたが、坂本勉理事長には会えませんでした。「差別をするな!」「虐待を許さないぞ!」「私たちは障がい者である前に人間なんだ!」と抗議のシュプレヒコールをして、当事者の仲間たちを激励しました。午後からは福岡県庁に行き、先の要求書を渡し、当事者からの意見を伝えました。

4月にも、全国から約人が集まり、ビラまきをしたあと、福岡県庁で障がい福祉課との話し合いをしました。

リブロはもっと反省しろ

福岡県と佐賀県は1月、リブロに「ちゃんとしなさい!」と命令し、@被害者と保護者に、虐待の説明をしなさい、A同じことを繰り返さないと誓いなさい、B職員のメンバーを変えなさい、C安心して相談できるところを作りなさいと、指導していましたが、リブロは反省も改善もしませんでした。

2月にリブロが提出した報告書では、説明と謝罪は1人だけで、職員もすこししか変わっていませんでした。新しく作った相談する場所も「リブロ」の役員が入っているので、安心して相談できないものだったのです。やっぱりリブロは、全く反省していないようです。それはリブロからの次のような答えを見てもわかります。@有罪となった坂本はクビにした、Aしかし坂本はしっかりやっていた。大きな声をだしたりあばれたり、けがをするのを止めるためにやっていた、Bエアガンは使っていない、C当事者がしたいというから、おもちゃのピストルでうちあった、という内容でした。

理事長の息子である坂本静治は、裁判で有罪となったのでクビになりましたが、リブロは今でも坂本を庇っているのです。坂本への罰も、「懲役1年6カ月、執行猶予3年」です。「3年間悪いことをしなければ、刑務所に入らずにすむ」ということです。これでは短すぎます。

佐賀県と福岡県は、「組織としてまじめに考えていない」と、事業ができなくなるような強い処分をするとしています。

9月にも福岡県は、リブロに対して社会活動推進課長名で「県民に対する説明を月日までに行いなさい」という改善命令をだしました。その後の調査でリブロは、自治体からの給付費約2700万円を不正受給していたこともわかりました。事業所指定も取り消される予定です。

虐待をなくすためにどうして虐待は続いたのでしょうか?

「障がい者施設で女性利用者が性的虐待を受けている」と福岡県障がい者福祉課に通報が届いたのは、障がい者虐待防止法が実行された直後の2011年月でした。

県の担当者は、系列施設のある佐賀県や市町にこれを知らせて、運営の中心である「リブロ」と4カ所の施設の中に入って調査をしました。その結果、ひどい虐待が行われていたことがわかりました。

虐待を受けた被害者の多くは知的障がい者や精神障がい者で、周囲の人にうまく説明することが困難でした。障がい者の弱点を狙った卑劣な犯行です。虐待した職員は理事長の長男で2年前に理事に就任し、現場を管理する権限を与えられました。親子で施設を思い通りに取り仕切っていのです。

昨年夏には、何人かの職員が虐待が行われていることを理事長に知らせて「やめさせて欲しい」とお願いしましたが、理事長は知らん顔をしました。親子だけで運営していたので、調査もせずにうやむやにしたのです。

虐待防止ワークショップ

虐待防止法ができてから、役所には被害相談が相次いでいます。佐賀県では件の相談があり、そのうち7件で実際に虐待が行われていました。熊本県では件でした。

虐待をなくすため厚生労働省は、今年の春に、初めて全国規模の実態調査を行いました。年内にも調査結果をまとめ、効果的な施策の検討を始めるそうです。

全国では、まだまだ虐待事件が起こっています。施設という『密室』で起きる虐待は、発覚が遅れてエスカレートしやすく、早急な対応が必要だ」と指摘する大学の先生もいます。 JIL(全国自立生活センター協議会)は、「虐待防止ワークショップ」を行っています。「つらい」ことを「つらい」と言う勇気をもって虐待に立ち向かうなかまを増やしていくためです。毎年、全国カ所以上で開催しています。

ピープルファーストは、「なかまで協力し、裁判を一緒に闘い、虐待をなくすための活動をします」として、「大きな壁に立ち向かうために、なかまがもっと力強くなって全国のなかまで絆をつないでいきたい」と大会でアピールしています。

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