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特集:障がい当事者の意見を基本にバリアフリー化を
ユニバーサルデザインのサッカースタジアムに 万博記念公園周辺 大規模開発事業

万博記念公園周辺で2つの大規模開発事業(ガンバ大阪・スタジアム建設、エキスポランド跡地開発)が進められています。これについて、「吹田のバリアフリー・交通アクセスをめざす会」(代表者・赤尾広明・以下「吹田バリポツ」)が提出した請願が、吹田市議会で全会一致で採択されました。請願は、「誰もが安心・安全に観戦・使用できるように、障がい当事者をまじえて、@継続的に協議の場を設けること。A設計段階や建設段階で当事者が参画できる場を作ること。B完成後のスパイラルアップ(注参照)、を求めています。

請願の紹介議員となった西川たけお議員は、「全会一致での採択なので、市議会の意思は明確に示されました。請願内容は、吹田市が「スタジアム建設募金団体」と三井不動産鰍ノ伝え、3月議会で結果が報告されます。誠実な対応を期待しています」と語っています。

今号では、「吹田バリポツ」代表の赤尾広明さんに、スタジアム建設におけるバリアフリー化の現状をお聞きしました。赤尾さんは、高校生時代、アメフトの選手だったこともあって、Jリーグが開幕してからは何度もスタジアムに観戦に行く大のサッカーファンです。「ファンだからこそ、使いやすいスタジアムにして欲しい」と願っています。(文責・編集部)

市議会請願 全会一致で採択

昨年7月、バリアフリー化について建設募金団体宛に要望書を提出しました。内容は、車いす観戦席の場所・仕様についてや、エレベーター・トイレの広さや数などです。協議の中で「ガンバ大阪」側は、車いす観戦席について、「ホーム・バックスタンド・ゴール裏などに設置するので、360度どこからでも観戦できる」と説明しました。メインゲートがある3階の最前列に車いすスペース約300席を用意するという計画です。エレベーターで5階までは移動できるそうですが、1・2階に関しては、「構造上、警備上の問題があって困難」としています。

しかし、一般の人は観戦席を自由に選べるのに、車いす利用者は、3階に限定されてしまうのは、障がい者権利条約が謳う「合理的配慮」に欠ける対応です。「1階は、ボールが飛んできて危険」という声も聞きますが、ファンとしては臨場感を味わえるので本望ですし、それは自己責任だと思ってます。

「構造上の問題」にしても、スタジアムなら必ず救急車が出入りしたり、物資を運び込むための通路があるはずです。それを利用して1階の観戦席に誘導するルートを確保するのは、構造上無理とは思えません。

私たちは特別扱いを求めているわけではありません。一般のサッカーファンと同じように、観戦場所を選択できるよう要望しているだけです。

メジャーリーグ「サンフランシスコ・ジャイアンツ」のスタジアムは、車いす利用者のために、一般席を取り外せる構造になっています。ヨーロッパでも、ピッチ(グラウンド)間近に車いす席のあるサッカースタジアムはたくさんあります。

車いすの観客が快適に観戦できるように、例えば、陸上競技トラックがある埼玉の浦和駒場スタジアムでは、そのトラック上で観戦させてもらえることがありますし、大阪の近鉄花園ラグビー場でも同様の対応をしてもらえることがあります。

最近増えてきたサッカー専用スタジアムは、ピッチの間近で観戦できます。(新スタジアムはピッチから7bほどの予定)間近で見られるからこそ、1階の最前列で見たいというのがサッカーファンの気持ちです。

実際の使い勝手をシミュレーションして

ガンバ大阪スタジアムのバリアフリー化は、「Jリーグ協会やFIFAが示す最低基準をクリアすればそれでよし」という姿勢に見えます。設置基準は、収容人数に対してトイレや車いす席の数を決めているだけなので、実際上の使い勝手を考えると課題がたくさんあります。

例えば、エレベーターが通常の人乗りなら、車いす2台でいっぱいなので、大勢来ると渋滞になります。入った方向のまま出られる2方向仕様にすれレに行列ができれば、多目的トイレも混雑するので、車いす利用者はハーフタイムにトイレを利用できなくなるでしょう。

スタジアム建設予算は、約140億円なのですが、全額寄付金で賄う計画です。現状で30億円ほど不足しています。寄付が集まらない場合、設備の仕様が切り下げられ、トイレやエレベーターの数が減らされたり簡易化されることを心配しています。

「日本初! 寄付金だけで建設するサッカー専用スタジアム」というふれこみで寄付金募集が始まったのですが、まだまだ寄付が不足しているようです。募集期限を延長して、目標を達成しようとしています。昨年月に着工しているので、世界に誇れる高機能フルスペックで、誰でも楽しめるスタジアムになって欲しいです。 

市民を巻き込んで大きなうねりを

来年秋の完成予定なので、バリアフリー化に向けた改善には、あまり時間がありません。今回のスタジアム建設は、いろいろな意味で画期的なことなので、ユニバーサルデザインに基づいたスタジアムにしてほしいと強く希望しています。

具体的には、多様な障がい当事者が計画段階から参加して、意見を述べる場はとても重要です。案内板も、英語や韓国語など外国語表記のものだけでなく、ひらがな表記の案内板も必要です。視覚障がい者が見やすい文字の大きさや配色、音声案内などの配慮も重要です。4万人も収容する大規模スタジアムですから、迷子になった時に、誰もが適切に行き先がわかるように、わかりやすい図面や標識を設置するなどの配慮も必要です。少数派の人にも配慮したスタジアムであって欲しいと思います。

ガンバ大阪のスタジアムは、「市民に開放されたスタジアム」として、オフシーズン中には、市民スポーツ大会などにも使われる予定です。その際、車いす利用者が「芝生が傷むから」という理由で拒否されることはないのか? 心配しています。

先日、阪神競馬の最終日、「ファン感謝デー」で芝生を解放するというイベントがありました。私たちも列に並んだのですが、「芝生が傷むから」という理由で入場を拒否されました。シーズン中で芝生が傷んで困るというのはまだ理解できなくもないですが(それでも差別的扱い)、オフシーズン中まで「車いすお断り」は困ります。

障がい者は、生活全般にわたって何かと排除される経験の中で生きています。サッカーを楽しみたいという気持ちは、障がいとは無関係です。応援に来たのに理不尽な扱いをされたり、トイレに行けず苦労したといった嫌な思いをすると、楽しい思い出が台無しになってしまいます。サッカーを楽しみたい人が、気持ちよく観戦して、気持ちよく帰って行けるような場所であって欲しいのです。

地元が一体となって応援したい

バリアフリーは、障がい者だけの問題ではありません。スタジアムは、防災拠点として利用され、食糧も備蓄するので、吹田市民全体の問題です。 ところが、吹田にスタジアムができることすらほとんど知られていないのが現状です。スタジアムの建設費は寄付金でまかないますが、寄贈後の運営費は市民の税金からとなりますので、多くの方に関心を持って欲しいと思います。

浦和レッズ(埼玉)や鹿島アントラーズ(茨城)などは地元意識が強く、ホームでのゲームは常に満員です。地元が一体となって応援しているからです。

一方、ガンバ大阪は、優勝した時ですらパレードもなく吹田市としての盛り上がりは、ありませんでした。今回のスタジアムは、完成後は「吹田市立スタジアム」になるので、なおさら市民の関心と応援を盛り上げる必要があります。

「吹田バリポツ」は、障がい当事者として声を挙げていますが、「全ての人の声じゃないでしょう」と返されてしまいます。障がい者全体の声として要望する必要があります。高齢者や妊婦の方々も、気持ちよく観戦できるよう声を上げていけば、もっといいスタジアムになります。市民を巻き込んで、運動を進めたいと思います。

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