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特集:フィリピン巨大台風被害障がい者支援現地調査を終えて〜台風被害と貧困、2重に苦しむ障がい者〜 DPI日本会議 堀場浩平さん

前号に続き、昨年月、フィリピンを直撃したヨランダ台風被災障がい者支援活動の報告です。調査団の堀場浩平さん(DPI日本会議)とフィリピンでろう学校を運営する佐藤宝倉神父に報告をお願いしました。

DPI日本会議は、災害直後より支援金の受付けを開始。ゆめ風基金と協働してマニラの自立生活センター「ライフヘブン協会」と連携し、@当事者組織の拠点整備(事務所の改修、備品購入等)、A車いすをはじめ福祉機器の提供を基本とした支援を開始しました。  現地支援の鍵となるアブナーさん(脊髄損傷)は、マニラ・自立生活センターの代表です。被災障がい者支援を担当するNCDA(全国障がい者問題協議会)メンバーで、各地の当事者団体とも連携を持っています。

2月の現地調査では、被災当事者(名)への聞き取りも行われました。障がいの状況、現在の生活などについて聞き、福祉機器供与につなげます。要望のあった福祉機器は、車いす・松葉杖・白杖・トーキングフォン・補聴器・義肢装具・車いす車輪交換などでした。

今後、日本で支援を募って、具体的な支援に入ります。ご協力をお願いします。(編集部)

復興は今始まったばかり

タクロバンに滞在した4日間では、被災状況の一部しか知ることはできませんでしたが、限られた情報の中から感じたことを報告します。

発災より3カ月が経ち、当初「民間機は使用できない」とすら言われていたタクロバン空港も、プレハブのような形ではあれなんとか機能し、多くの旅客が利用していました。沿岸部ほど家屋の破壊がひどく、ブルーシートなどで応急処置をして住み続けている家も多く見られました。電気・水道は復旧しておらず、発電機や井戸水でしのいでいる状況です。

これに対し交通量は大変多く、商店も再開され品物はかなり流通しているように見られました。USAID(米国国際開発庁)やキリスト教系の援助機関のロゴをつけた大型トラックが何台も行き交っており、多くの海外からの支援組織が活動しています。

現地での活動拠点として支援対象者の割り出しに協力を依頼したTAPDICO(障がい者の共同組合)は、障がい当事者団体というよりは軽度障がい者による自助組織と呼んだ方が適当であるように思われます。自力で歩行できる者が大部分で、車いすユーザーに出会うことはありませんでした。今回の支援におけるコーディネーターであるマニラの自立生活センター「ライフヘブン協会」のアブナーさんもこの点は了解しており、TAPDICOを足がかりとして活用しつつ市行政のソーシャルワーカーが別個に持つデータもできる範囲で利用したい意向でいるようです。

貧困と障がいの連鎖

数年前にマニラ及び近郊の農村を視察したことがありますが、私見ながらフィリピンの貧困の深刻さは東南アジアの他の国々の比ではないように思います。

今回の調査でも、被災による窮状はもちろんですが、それ以前から酷い状況にあったことがうかがわれる人々に多く出会いました。家屋や職といった生活基盤が災害により奪われることで、福祉制度が皆無であるフィリピンでは、障がい者を抱える世帯の生活水準はより低い極貧になっているという現実があります。

特に多く見られたのは重い心身障がいをもつ子どもたちでした。立つことやコミュニケーションができない子どもを持ち、もとから貧しく病院に連れて行くこともできないまま―という家庭が多く見られました。また、バラックのような家屋が密集した貧困世帯に似たような地区に心身障がい児が4〜5人いるところでインタビューを行うことがありました。災害の前後に関わらず、フィリピンでは廃棄物処理が徹底しておらず生活ゴミの廃棄場がスラム化していますが、これらにより飲料水が汚染されることは想像に難くありません。ダイオキシンなど、なんらかの環境因子が障がいを誘発していることが考えられます。これらはあくまで推測にすぎませんが、こうした途上国における障がいと貧困の連鎖があり、また災害がそれに追い打ちをかけるという悲惨な図式が浮き彫りとなった調査でした。

タクロバンでは、日本からも多くの民間援助機関が支援を行っています。障がい者支援を行う団体とは支援先リストを共有し重複を避ける予定です。

大手の援助機関が圧倒的な資金・物量で支援を行う中で、DPIとして支援を実施していく意義は、当事者性であると考えています。現地の当事者の声を反映し、なおかつ重度障がい者を優先した「集中と選択」による支援に特化することに私たちの支援の意味があるのではないでしょうか。

現地と日本を繋いで 聖フランシスコ・デフ・センター 神父 佐藤宝倉

日本のDPI関係者4名とマニラから1名(車いす)の方々が、タクロバン市における台風ヨランダの被災障がい者を調査に来るというので、何かお手伝いできることがあればと思い、同行させていただくことにしました。

私は、レイテ島の隣のサマール島カルバヨグ市で小さなろう学校を経営しています。タクロバン市は通り道であり、そこのろう者たちとも年以上に渡って交流を続けています。  台風の後、すぐ調査を開始しましたが、電気も水もホテルも車も店やレストランもない…、「無い無いづくし」でした。

調査チームが来る2月上旬になっても一向に条件は良くなりません。宿泊場所は、現地の方が手配するということでしたが、それとても不可能に思われました。ホテルというホテルは、全て外国のNGOや国の役人さんたちに専有されており、しかも1ケ月毎の契約になっていたからです。

そこで私が常宿にしているレイテ大学ビジネスコースの実習用模擬ホテルに、空いている部屋を探すよう依頼しました。一行の到着日が近づき毎日タクロバンに電話をかけましたが、前日になっても空きは無し。依頼された方が、どんな手を使ったかは知りませんが、当日の朝、「3部屋が利用可能になった」と連絡をもらいました。決して立派な宿泊所ではありませんが、何とかベッドにありついた次第です。しかし電気がないと水も出ないので、井戸から汲んでこなければなりません。担当の人がいれば、やってはくれるものの、夜は全くサービスがありません。幸い、一行は楽しい方ばかりで、夜はノミ(飲み)ニケ―ションとなりました。

彼らと行動を共にする中で、長年の経験と自信に満ちた障がい者の「ど根性」(失礼な言い方だろうか)と、的確な判断と指示・対処を見ることができました。それは、私にとって刺激的であり、活を入れられることにもなりました。

ろう者自立のチャンスに

どんな災害の場合でも、まず第一に必要なことは、命の安全であり、そのために必要な食糧や仮住居などの支給は、寄るすべのない人たちに無償で提供されなければならなりません。基本的な必需品は、障がいにかかわりなく同じです。しかし、さらにそれぞれの障がいに応じたアクセシビリティを確保することが肝心です。車いすを寄贈することによって下肢に障がいがある人が生活しやすくなるということです。家族による介護の疲労も軽減され、本人の行動の自由も広がります。

私が関わっているろう者のアクセシビリティは、「ことば」であり、そこが他の障がいのある方々と異なっている点です。私どものNGOは、フィリピンのろうあ者団体と連携して隔月のスローペースですが、ろう者を対象に米や日用品の配布を行ってきました。

3月に入り、市内には電気が戻り、様々な商店が営業を再開し始めています。しかし多くの人はまだ仕事がなく、さらに食料品や建築資材の値段が他市に比べて2倍くらいに高騰しているので、生活再建や家屋の再建もままなりません。

そんな中で、ろう者たちは、いかにこの時間を過ごし、どのように立ち直って行ったらいいのでしょうか。この危機をろう者自立へのチャンスに変えていくことが大切だと考えています。リーダーシップ訓練(3月)、手仕事(2〜4月)に精を出すこと、そして手話を、自分のことばを人に教える人になること(4〜5月、マニラで指導者コース開催決定)、さらには自らの手で手話通訳者を育てる目標をもてるよう支援していきます。これからもお互いに助け合って行きましょう!

今後の支援について

ゆめ風基金とDPI日本会議は、現地調査をふまえて、次のような具体的支援を決定しました。

@福祉機器供与について

台風が原因で障がいを負ったケースは確認されませんでした。しかし、インタビューを行った障がい者の生活は極めて貧しく、障がい者のいる家庭の生活水準が、低いレベルであることも想像できます。特に車いすを要望する障がい者は、狭く暗い半壊状態の住宅か仮設住宅で不自由な暮らしを余儀なくされており、緊急支援が必要です。

A) 車椅子・松葉杖

インタビューをした被災者を優先的に、車いす15台、松葉杖8組を供与します。福祉機器は、フィリピンで活動する「タハナン」で調達します。タハナンは、大規模な福祉工場です。車いす等の福祉機器、知育玩具・家具等の木工品を製作しており、障がい者の就労の場・生活の場ともなっています。

A現地活動拠点への支援

A) 車両整備

障がい者の共同組合である「TAPDICO」が利用しているハイエースは、整備不良で故障しそうだったので、オイル交換等の応急処置を行いました。

B) TAPDICO活動支援

TAPDICO事務所と仮設住宅が、障がい者の生活・就労の場となっていることがわかりました。TAPDICOへの支援は被災障がい者の救援につながるので、調査団で判断して活動資金を寄付しました。

B支援のための資金調達

@Tシャツの作成・販売を行います。アブナー氏がデザインし、マニラで作成、日本で販売します。

A連携先を探します。NCDAの被災障害者救援会議に主旨を説明し、車いす購入等の費用分担への協力を呼びかけます。タクロバン市への救援活動を実施している日本のNPO「難民を助ける会」にも連携を提案します。

救援金あて先:郵便振替口座00980−7−40043

ゆめ風基金―フィリッピン台風救援金と記入して下さい。

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