当事者リレーエッセイ:心配なのは感染症より人手不足 鈴木勉
1月末に知人から、財団法人たんぽぽの家(奈良市)の方が国立民族学博物館(以下民博とする)内の案内板と触地図(触図、触知地図)について意見を聞きたいので、弱視の人を探しているとの電話があった。私は民博は行ったことがなく、ちょうどいい機会だと協力することにした。
今回の民博内の調査は、長年、ユニバーサルミュージアムの研究をされている九州大学の平井康之先生からたんぽぽの家に協力依頼があったものだ。全盲、弱視それぞれ2名ずつの視覚障がい者が調査に協力することになった。ちなみに、たんぽぽの家はインクルーシブデザインの調査や研究をされているとのこと。
調査は2月日にまだ試作段階で行われ、3月日に完成品を見て、既存のものと比較した。現時点での案内図は、普通文字のものと触地図が約メートルほど離れた所にあり、記載内容も少し違う。今回試験的に作られたのは、普通文字のものをデジタル化したものの上に、透明のアクリル板を動線や展示場などの部分を切り抜いてくっつけ、触って分かるようにするとともに、音声も出るようにしたものだった。
誰もが楽しめる博物館に
私は高校2年まで拡大鏡などを使えば普通文字などを見ることができていたが、高校3年時に視力が急激に下がり、点字も併用するようになった。途中から点字になったせいか、触図などは全く読むことができない私にとって、今回の調査はとても不安だった。調査に参加して、「触図が読める人、読めない人、いろいろな立場の人の意見が聞きたい」と言われ、ほっとした。
アクリル板を切り抜いた触地図は、動線部分は細い線になっていて、展示場などは丸く切り抜かれ、その部分に触れると、そこが何のエリアか音声で読み上げるので、とても分かりやすかった。ちなみに、既存の触図は私には全く読めなかった。
今回は試験段階であったが、これは普通文字の部分の色分けなどは実際のものと同じになっていて、音声も出るので、視覚障がい者だけでなく、字が読めない子どもたちでも、触ったり見たりできて、楽しめるのではないかと感じた。実用化されることを期待している。
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