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新聞の作り方112:4年目の「3・11」を新聞はどう伝えたか 石塚直人

東日本大震災から3年。3月日を迎えた全国紙(大阪本社版)の紙面は、生活と地域の再建を目指して奮闘する被災地の人たちの肉声をいくつも拾っていた。丹念な取材は現地の苦難を全国に伝え、時間とともに薄れがちな支援の再強化につながる。社会面以外のページにも写真つきで1人ずつ市民のコメントを入れた毎日など、紙面作りでも思い切った工夫が見られた。

8月にだけ戦争ものの特集をする、と揶揄される日本のメディアだが、期間限定でも「大切な問題を考える」ことは必要だ。考えないよりずっといい。ただ、今年の「3・」では、報道の限界もあらわになった気がする。直前にソチ冬季五輪があったにせよ、「考える」期間が短く、政府の無策をきちんと批判する評論は少なかった。とくに原発推進を掲げる新聞では、福島原発事故の被災者の存在は影が薄く、ほとんど無視した社もあった。 原発再稼動に向けた動きを加速する安倍政権の下、「福島」をどう扱うかはメディアの試金石と言える。津波で家族や仕事を失った人には同情しても「原発事故の被害を強調するのは国策の障害になりかねない」という感覚が一部にあるとすれば、その逆立ちは許せるものではない。

被害を伝えるメディアの役割は

11日夜のテレビ朝日「報道ステーション」は、福島の子ども人が甲状腺がんと確認されたニュースの周辺を詳しく報じた。人口比からすると平常時の100倍を超える異常値だが、福島県は放射線との関連は考えにくいとし、各紙の報道も小さかった。

番組によれば、一次検査の結果は県から1枚の書類で通知されるだけで、診断について具体的な説明はなし。検査は県立医大だけで行い、保護者が別の病院に出向いても、そこの医師は「県の指示でできません」。県立医大の教授は「別の診断が出ると混乱するから」とうそぶく。番組は、こうした閉鎖主義を厳しく批判するふくしま共同診療所の院長にも取材、放射線被害の実態を覆い隠そうとする県と医大の姿を明るみに出した。

ある保護者は「子どもさんの将来(就職など)のために」甲状腺異常のことを他言しないよう医師に言われたという。住民が自分の検査データを入手するのに、県の情報公開手続きを必要とするなど、主権者は誰なのかと言いたくなる。それにしても、他のメディアはなぜ同様の取材をしなかったのか。

福島第一原発の事故はまだ終息せず、放射能による環境汚染は続いている。5年後、年後に被害がどれだけ広がっているか、見当もつかない。地震国の日本でこれ以上原発に頼るなど、未来に対する倫理的な裏切りだ。全国各地で反原発の訴えが行われた9日(日)には、私も知人と一緒に阪神西宮駅前でマイクを握った。通行人の反応があまり良くなかった背景に、反原発報道の弱体化の影響がないとは言えないだろう。

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