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特集:障がい者の立場で安全な駅利用を考える 可動式ホーム柵3タイプ・検証報告会 関西各鉄道会社一堂に会し、勉強会

5月12日、「障がい者の立場で安全な駅利用を考える―可動式ホーム柵3タイプ・検証報告」(主催・アクセス関西ネットワーク)が、大淀コミュニティセンターで行われました。

鉄道運転事故に占めるプラットホーム関連事故の割合は17.5%で、踏切事故、線路内立入に次ぐ件数となっています。バリアフリー新法でも、駅の新設や大規模改修時には、ホームドアやホーム柵の設置が義務づけられており、今ある駅についても設置基準に沿って設置する努力義務が定められています。

ホーム柵は、鉄道利用の安全性を効果的に高めますが、関西は関東に比べて設置が遅れています。アクセス関西ネットワークは、関西でのホーム柵導入を進めるため、試験設置が行われている駅(関西1カ所、関東2カ所)を検証し、どのモデルがいいのか? 各モデルのよい点・悪い点を、鉄道会社に伝えるため、実地調査を行ないました。

この日は、関西の鉄道各社10社の担当者も参加し、各モデルの評価に注意深く耳を傾けていました。関西で営業する大半の鉄道事業者が参加したのは、初めてのことです。事業者と障がい当事者との対話によって生み出される「交通バリアフリー」の可能性が大きく開きそうです。(文責・編集部)

様々な視点で検証

可動式ホーム柵実証・検討チームは、5名で構成されています。視覚障がい者(全盲・弱視)、車いす(電動・手動・ベッド型)利用者という、それぞれ違う障がいの立場からホーム柵を検証するためです。

実証検討チームは、可動式ホーム柵の試験設置が行われている関西=1カ所(JRゆめ咲線・桜島駅)、関東=2カ所(東急田園都市線・つきみ野駅、相模鉄道いずみ野線・弥生台駅)の駅に行き、チェックポイントを基に良い点・悪い点を比較・評価しました。

基準となるチェックポイントは6項目です。@ホーム柵下の隙間は何aか? A設置費用、B強度、C乗降客が多くホームの狭い駅での設置状況、Dホームと車輌の隙間・段差がなくスムーズに乗降可能か?、Eわかりやすい色分けや案内表示があるか。

@は、白杖を使う視覚障がい者からの視点です。柵下の隙間が20a以上あると白杖で柵が認識できません。幼児が柵をくぐり抜けてしまう危険性もあります。Aは、従来型では1駅あたり約3億円の費用がかかるため、安くできればより多くの駅に設置できます。Bは、電動車いすが万が一柵に当たっても耐えられるか?という電動車いす利用者の視点です。ホームの混み具合によっては柵に接触してしまう可能性があるからです。転落防止のためにも一定の強度が必要です。Cは、車輌との接触事故を防ぐためで、ホームが狭いほど転落を防ぐためにも柵が必要です。D段差・隙間解消は、車いすやベビーカー利用者にとってとても重要です。E弱視の方からの視点です。周囲の景色とホーム柵の色が似ていると柵が視認できないからです。

見えてきた改良ポイント

各障がいから見えてきたポイントは、以下のとおりです。

全盲の岸本慶子さん

@ホーム柵下の隙間を20センチ以下にして、白杖で柵を認識できるようにする。
A自分がどの車輌のどの位置に乗っているのか? 点字表示でわかるようにする。
Bホームで自分のいる場所を見失うことがあるので、点字ブロックだけでなく、ホーム柵があった方が安心できる。

弱視の三原ひろみさん

@ロープが細いと風景と一体化してしまうので、太めの方が良い。本数も多い方が良い。
A柵の色は、時間帯や日当たり・天候などにより見え方が違うので、「黄色」がいいとは必ずしも言えない。
B視覚障がい者は、柵に触れながらドア位置を確認することもあるので、柵に近づくだけで、離れるように警告音声が流れるのは問題がある。柵に一定の力が加わった時や、柵より外側に手や体が出た時に、警告音声が流れるようになるといい。

ストレッチャー型電動車いすの立林巳喜男さん

@ホームと電車の間がフラットだと、駅員さんに声をかけずに乗り込めるので楽でした。
A可動式安全柵は手軽ですが、強度に不安があります。雨にも弱そうで、ロープ式は首がひっかかったら危険だと思います。

手動車いす 足立誠さん

@ホームと車輌間の隙間や段差を解消して欲しい。上下昇降式ホーム柵のある駅は、どこも段差が解消されておらず、乗降に時間がかかってしまった。

電動車いす 川本将勝さん

@電動車いすでぶつかった時にロープの強度が耐えきれるのかが心配。

当事者と事業者対話が重要

最後に、佐藤聡さん(メインストリーム協会)が、報告会の意義と今後の活動について、次のようにまとめました。

ホーム柵を普及させるにあたって、当事者の声を鉄道会社の人たちにも聞いて欲しいと思って、各社をお招きしました。幸い関西で運営されているほとんどの鉄道会社が一堂に会する場となりました。こんな場は、東京でもないそうですから、日本初になるのかもしれません。せっかくお集まり頂いたので、この場を建設的な場とするために「交渉」ではなく「勉強会・報告会」としました。

ホーム柵は、視覚障がい者にとっては生死を分けるような重要設備なので、是非設置を進めて欲しいのですが、関西では設置が進んでいません。その理由は、鉄道会社の相互乗り入れで、車輌の長さやドアの枚数が違うため、固定式では対応できないとのことでした。このためドアの位置や枚数が変わっても対応できる可動式安全柵が、国土交通省の助成金を使って3タイプ開発されました。

今日の各鉄道会社の報告では、その重要性について十分理解して頂いていることがわかりました。当事者が実際の声を伝えると、鉄道会社の技術者は、熱心に聞いてくれます。技術者のみなさんは、誰もが「使いやすい駅を作っていきたい」と強く思っていることを実感できます。当事者が事業者に施設の使い勝手をしっかり伝えていくことが重要です。

ホーム柵設置の際には、あわせて段差の解消が重要です。大阪地下鉄の事例が紹介されましたが、見事に段差が解消され、誰もが使いやすい施設となっています。

今日の報告会をきっかけにして、当事者と事業者が日常的に意見を言い合えるような関係を作っていきたいし、私たち障がい者も、要求するだけではなく、事業者側の事情も理解しながら、より安全で使い勝手のいい設備の実現に向けてともに考え、建設的な場となるよう努力したいと思います。

アクセス関西ネットワークは、年2回の取組を行っています。バリアフリー化に熱心な団体や企業を表彰する「アクセス関西大賞」も募集・選考しています。

10月には、楽しみながら街でバリアフリーチェックを行う「なんばおにごっこ」も開催します。こうした集会や行動を通じて、様々な交通アクセスの課題を共有し、解決に向けた運動を発展させていきましょう。

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